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カフェオレ⑭

そう。 現実から目を背けて。 でも。 「俺もリセットだな。また一からやり直しだ。」 コツンと石ころを蹴飛ばした。 春に言ったわけじゃない。 完全に独り言。 春もわかっているのか何も言わない。 それでも 決意を聞いて貰った気がして勇気が湧く。 やり直し。 また一から。 きっと出来る。 夕焼けが空をだんだんオレンジ色に染めていく。 もうすぐ夏だな。。 今年は空梅雨であまり雨も降らない。 桜が散り春が終わり ジメジメとした嫌な季節が 来る頃に 一ノ瀬春は俺の前に転がった。 まるで空梅雨を運んできたかのように 晴れ間が続き 過ごす日々が 俺の湿った感情の 水分をどんどんと吸い取ってくれる。 ・・まあ。水不足は困るけど。 一人くすっと笑うと 春は不思議そうに 瞳をくるんと回す。 何でもない。と首を振った。 ・・犬コロか。 拾った。 ・・違うな。 来てくれた。 俺に。 辿り着いてくれたんだ。 「夕飯 何か作るぞ。何食べたい?」 さっき食べたばかりなのに そう聞くと 春は 目を輝かせて口を開く。 「肉豆腐・・。」 「以外な。」 ええ。。と寂しそうに眉を下げた。 「お前。昨日もまかない肉豆腐だったろ。 俺はそれしか作れないんじゃねーぞ。 よし。肉豆腐を超える何かを作ってやる。 何がいーかな。。春。何が好きなんだよ。」 「何でも好きです。」 「わかってっけど その中でもさ。。」 春は空を見上げながら しばし考え 目線を俺に戻すと 「佑さんの作る物は全部好きです。」 そう言って 柔らかい笑みを浮かべた。

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