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カフェオレ⑳
「剣崎さんが首を縦に振らなければ大丈夫だから。
昨日話を聞いたら ちゃんと断ってるって
言ってたし 知り合いの弁護士にも
相談しているらしい。」
山田さんは 不安がる皆んなに向かってそう言った。
佑は ホッと息を吐き出す。
剣崎さんというのはこの辺りの地主で
商店街や周辺の土地の多くを所有している。
新しく店を出している人達は 剣崎さんから
買ったり 借りたりしている人が多い。
剣崎さんが売らなければ ここ全部の
地上げを任されている奴らも 手立てがない筈。
とはいえ 商店街や周辺の人達の中には高く売って
他に行こうと考える人もいるし
実際に売ってしまった人もいる。
だからこそ立ち退きに応じない人達に
嫌がらせが始まったんだけどな。。
崇の店にも来たらしく 元々臆病なアイツは
完全にビビり お父さんに売ろうと
言い出したと聞いてる。
明は 「ケッ。情けねえ。」って吐き捨ててたけど
庶民はヤクザと関わる事なんて無いし
そりゃ怖いだろうな。。と気持ちはわかった。
「陽太が見回りを強化してくれるらしいので。
暴力事件にする訳にもいかないだろうし
大丈夫だ。みんな怖がらず しっかりとした
態度で 対処して下さい。」
山田さんがそう言って 寄り合いはお開きになった。
ここからは宴会。
とはいえ 大体残るのは古参メンバー。
俺。まだ仕事が残ってるからと立ち上がる。
「じゃあね。」
手を振ってくれる皆んなに頭を下げ
襖を開け 廊下へ出た。
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