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カフェオレ㉚

台所からマグカップを二つ持って出て そのまま 縁側に座る 佑さんの横に座る。 焦点の合わない目が ゆっくりとこちらに向いた。 「カフェオレです。 Tシャツ一枚じゃ まだ寒いですよね。これ飲んで温まって下さい。」 はい。とマグカップを差し出すと 佑さんはのろのろとした動作で遺影を置き 両手でマグカップを掴む。 そっと口をつけ ずずっと飲むと ほっと息を吐き出した。 「・・あったかいな。。」 心細げな声音。 持って帰ってきたシャツを羽織らせる。 「風邪引きますから。中に入りましょう。」 そう言ってはみるけど佑さんは動かない。 じっとマグカップの中身を見つめたまま 「・・・ずっと寒いんだよな。」 ぽつりそう呟いた。 「え?」 聞き返すが答えは返ってこない。 黙ってそのまま待っていると 佑さんは急にハッと何かに気づいたように 俺へと視線を向ける。 すぐに視線が彷徨い始めた。 「ああ・・春。。ごめん。 俺。片付けもしないでこっち戻って来て。。 悪かったな。えっと。。。」 「佑さん。」 「何やってんだろうな。ああ。もしかして 修がシャツ届けてくれたのか。 アイツにも迷惑かけちゃったな。。」 「佑さん。」 「豆腐屋は朝早いのによ。余計な手間かけさせて 明日ちゃんと謝らねーと。。えっと。 そう。。大和どうした? アイツ用があるって。。」 「佑さん!」 肩を掴み 少し揺さぶると 佑さんは ぐっと唇を噛みしめる。 ボロボロと涙が零れ落ちた。

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