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カフェオレ㉛
ああ。
駄目だ。
もう取り繕えない。
佑さんの手からカップを取り上げ
手首を掴んで引き寄せる。
正面からぐっと抱きしめた。
ビクッと細い身体を強張らせる。
「春・・ごめ・・だいじょう・・。」
「もう。少し黙って。」
トントンと背中を叩くと 佑さんはやっと
身体の力を抜き そっと俺の胸に顔を埋める。
嗚咽が漏れ そのまま静かに泣き続けた。
静まり返った夜の空気の中 押し殺した
泣き声だけが聞こえてくる。
しばらくそうしていると そっと身体が離れ
佑さんはおずおずと俺を見上げ
涙に濡れた瞳で恥ずかしそうに俺を見た。
「もう・・大丈夫。。ごめんな。」
「いえ。。。すいません。俺。。」
ふるふると腕の中で首を振る。
抜け出そうとする身体を羽交い締めにして
そのまま抱きしめていると
佑さんは 諦めたように
力。強いな。。と 小さく息をついた。
ゆったりとその身を俺に預けてくれる。
トントンと背中を叩き しばらくそうしていると
落ち着きを取り戻したのかゆっくりと身を離し
恥ずかしそうに少し口元を緩めた。
「・・いやあ。。泣いたな。。いつぶりだろ。
思い出せねえわ。ホント。
俺。じいちゃんばあちゃんが死んだ時も
泣かなかったんだよ。泣いてもしょうがないと
思ってさ。ああ。そういや親が死んだ時もらしい。
この子は親が死んでも泣かないのかって
言ってたオバサンがいたんだって。。」
ああ。そうだ。
佑さんは急に思い出したように話を続ける。
「ガキの頃さ。友達が泊まりにきて なんかよく
覚えてないけど 二人でワンワン泣いたな。
そういえば。。多分あれ以来 泣いてないかも。」
「・・なんで泣いたんですか。」
うーん。と佑さんは首を傾げる。
「何だったかな。。俺 ガキの頃の記憶って。。
ちょっと。。その。色々曖昧で。
親が死んだのが原因なのかもしんないけど
結構色々忘れちゃってんだ。
現実逃避しちゃってたのかもな。」
そうだったのか。。
やっぱりショックが大きかったんだろう。
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