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第3話
幸せは長く続かないなんて、誰が言ったか分かんないけどほんとその通りだった。
付き合って二ヶ月も経たないうちに、先輩は再び女の子をとっかえひっかえしだした。
俺がそれを問いつめると、本当に申し訳なさそうな顔をして「ごめん、陽平が一番好きだよ」と謝る。そんなことが何度も続いた。そのうち俺も慣れて、今度は可愛い系かとか、次はスタイルがいいとか、校門から出た先輩が他の女と一緒に帰るのを屋上から普通に眺める事ができるようになっていた。
普通にと言っても、もちろん胸中が穏やかなわけではない。はらわたが煮えくり返りそうなくらい、隣の女に嫉妬する。
先輩も憎いけど、それより遥かに隣の女が憎かった。
どうして先輩は俺じゃなくて、そんなどこにでもいるような女なんか。何度そう思って、何度どうして自分は女じゃないんだろうと思った。
別に俺はホモなわけじゃない。普通に今までは女の子と付き合ってきた。だからきっと、バイだったんだろう。
でも先輩はきっと女の子のほうが好きで、だから俺じゃだめなんだと思った。
***
「先輩…」
「陽平じゃん。あ、これ食べる?」
屋上に行くと先輩は一人フェンス越しに空を眺めながらチュッパチャプスをなめていた。
ポケットから出されたのは、いつかのイチゴ味のそれ。
先輩がなめてるのもイチゴ味だった。
またイチゴ味買ってくれたんだとか、俺はそれを内心ちょっとだけうれしく思いながら、でも決してあのときのような笑みは浮かべられないから、苦笑いでそれを受け取った。
「…せんぱ」
「あのさ、」
「…はい」
「空きれーだよな」
「そうですね」
「…一番好きなのは陽平だよ」
「……はい」
はらはらと流れる涙を止めることはできなかった。
俺だって先輩が一番好きだよ。先輩以外好きじゃない。先輩以外に愛してる人なんかいない。
でも、じゃあ、先輩には二番目が居るんだろう。俺以外にも愛してる人が居るんだろう。俺だけじゃだめなんだろう。そんなの嫌で、でも離れるのはもっと嫌だった。先輩がいないなんて、そんなの今の俺にはもう耐えられない。いや…今だって先輩がいつも隣居る訳じゃない。
きっと俺は。先輩が俺を捨てて、ほかの誰かを一番にしてしまうのが怖いんだ。
「陽平、好きだ」
「俺も好きです」
俺と先輩以外誰もいない少し寒い屋上で、先輩に抱きしめられる。春はもうすぐそこなのに。俺は先輩が居なきゃ春になっても夏になっても、凍えて死んでしまいそうな気がした。
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