4 / 9
第4話
***
「…いってぇ…」
朝起きると、頭痛がひどくて目がくらんだ。ぼーっとしていると母親から何度目かの呼び声が聞こえ俺は痛む頭を抱えつつベッドから降りて下へと続く階段を下りた。最後の段でつまづいて、危うく怪我をするところだった。
「陽平!お母さん今日用事あるからもう行くからね!ご飯食べてちゃんと学校行くのよ!」
「俺…」
「じゃあね、いってきます!」
バタンと慌ただしく玄関の扉を開け放ってどこかへ出かけてしまった母親。
仕方なく朝食の席に着くが、食欲はわかない。
親父はもうとっくに会社へ行ったし、小学生の弟は今日は確か遠足だとか言ってた気がする。長女は一人暮らししてるから居ないし、家の中は俺一人。
誰にも今の体調を言えないっていうのは、なんだか酷なもんで。
どうしてこういうときって逆に頑張ろうとか思って、学校行っちゃうんだろう。
俺は朝食にラップをかけて冷蔵庫にいれ、飲み物だけ飲んで家を出た。
学校まで徒歩15分。いつもならそう遠くない道のりなのに、今日は疲れる。
風邪だろうか、頭に手を当てると熱い。でも手自体が熱いからどうなのかよくわからない。
途中何度か地べたにへたりとしゃがみ込み、それでもなんとか学校にたどり着いた。
「はよ」
「はよー陽平、あれ?なんか具合悪い?」
「おう、頭痛い」
「まじかよ、なんで学校来た?馬鹿じゃん」
「…なんでだろ」
「保健室行く?」
「…そうする、担任に言っといて」
そう言って、俺はそのまま保健室へ向かった。
この調子だと、今日は保健室で少し寝たら自宅へ帰る事になりそうだ。
来た意味、ない。
ふらふらとふらつきながら、やっと保健室へ着く。長い道のりだった。もうほとんど意識がなくて、気持ち悪くて吐きそうだった。
「せんせ…」
ガラッと扉を開ける。
「ああっ!や、…はるき、ぃ!!」
「はやいんだよ、お前っ」
「だって、ああっ春樹がっ」
耳を疑った。
薄いカーテン越し、先輩の声と、知らない人の声。
保健の先生は居ないようで、
男子校のここに女が居るわけないから、相手は必然と男になるわけで
「春樹、好き…」
「俺も、好きだ」
その声が先輩の名前を、下の名前を、惜しげもなく呼ぶ。先輩はそれに優しく、甘い声で答える。
すうっと頭が冷えていく。
先輩の一番っていうのは、きっとたくさん居るんだろう。俺だけじゃないんだ。
今までは、女だけだと思ってた。だから男の中だったら俺が一番だって思ってた、でも、男とも浮気をしてるってことは
「俺は、いらない…」
扉を閉めることもせず、俺はそこから走り去った。
ともだちにシェアしよう!