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第1章の3(←マリアの君、皇帝ZENNに驚き続ける)
「なんだ、冷たいなあ。」
そう言いながらも半沢はマリアに笑顔を向け、
「メンバー全員こんな感じ? 」
「はい。こんなドレスは俺と、もう一人のギターだけですけど。」
「あ、もう食指動かしてる。」
ZENNがからかうと半沢はにやりと笑い、いじりがいのある素材かもしれない、と言う。
「今度、一回、こういう遊びの時でもいじらせてもらえない? メンバー全員連れて来ていいからさ。」
どう答えていいか困ったマリアはZENNの顔を見た。彼は優しく微笑んで、
「せっかくだからお願いしたら? 」
「はい、それでは…」
それを聞いた半沢がうなずいたところで、彼のマネージャーが呼びに来た。
「ちょっと失礼。」
彼が立ち上がると、それまで三人を遠巻きにしていた人々が再びZENNとマリアに声をかけてきた。
紹介されるたびにマリアには驚きの連続だった。この業界では有名なカメラマン、ライター、スタイリスト…みんな、ZENNが次に何を始めるのかいち早くチェックしようとしているのだと、マリアはすぐに気がついた。
ZENNは彼らに対してもマリアとMOONの気に入った点―アマチュアとしてはギターが上手いとか、曲のアレンジがいいとか、そんなことをアピールし続けた。
契約もあとは本当にサインだけなのだろうとほっとする反面、こんなに気に入られていることが、マリアには恐ろしくなってきている。
「それにしても今度はずいぶん綺麗な人だね。ZENN君、一緒にいて、アブナイ気持ちになったりすることは…ないか。」
カメラマンの彼があわてて濁したのは、ZENNとは古い付き合いで、ZENNがゲイは大嫌いというのを思い出したのだろうとマリアは想像した。
マリア達MOONは最初に自分達を拾ってくれたROSEのギタリスト・麗華(れいか)から、そのことを聞いていた。
ZENNはゲイが嫌いだから、話をする機会があってもそういった話題は避けるようにというのである。
それは、プロモーションビデオの撮影でロンドンに行った時、危険な地区に迷い込んでしまい、ゲイの男達に追い回され、麗華と必死で逃げたからだというのだ。。
「アイツらにしてみれば、夢のようなオリエントの美形だったんだろうよ、ZENNちゃんは…まあ、自分の顔嫌いって人間だけど…」
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