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第1話の7(←皇帝ZENNに…なマリアの君)
結ばれて間もない幼い恋人、由真の顔はすぐに抹殺した。
唇を貪られている間じゅう、マリアの両手はシーツを握り締めていた。
そうでなければ、自分を味わっているこの男を殴りそうだったからである。
「そんなに緊張するな。男は初めてでもないんだろう?」
「いいえ……迫ってきた奴は、殴り倒してきました。」
「それは怖いな。でも俺は殴れないだろう?」
その通りだった。ボディーガードもいない今、その気になれば倒せるのに…今度は抱き締められる。
そして、瞳を見つめられる。そのZENNの表情に、マリアは驚いた。
彼の薄笑いには、おぞましい欲望はみじんもなく、はにかんだような、若い恋人のようなところがあったから…
どうしてかマリアは、今度は自分の方からZENNにしがみついていた。
「…案外ものわかりがいいんだな。バンドのためなら、何でも堪える、か? 」
その言葉が悔しくてたまらなかった。
ZENNに頬をすりよせ、顔を見せないようにしながらマリアは胸の中でうそぶいた。
そうだよ、それがどうした。こうなりゃテメエを俺に溺れさせてやる。
あんたを踏み台にはい上がってやる。地獄に落ちるのはテメエだよ…
「でも、俺はお前のそんなところが…気に入ってる。」
横たえられてもまだ、ドレスの胸が開けられれば彼の手も止まるのではないかと、マリアは希望をつないでいた。
が、甘かった。ZENNの唇は、舌は、マリアの肌をくまなく求めてやまなかった。
(嫌だ…)
自分の奥の何かが、揺すぶられ、目覚めそうになっているのを、マリアは感じ、あわてて演技と自分に信じ込ませようとする。
それなのに、思わず唇からかすかに声はもれた。
自分がおぞましかった。
が、ZENNはそれをからかうどころかますます燃え上がっていく。
(そう。こうして絡めとってやるんだ…)
マリアは自分に言いきかせようとする。
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