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第1話の10(←マリアの君、無残?)
ドアが閉まっても、最後の言葉の真意がマリアにはわからない。
しかし、気がつけば二十畳ほどはあろうかというこのベッドルームにこのままいるわけにもいかず、マリアは服を身に着け始めた。
廊下に出ると、マリアはZENNの気配を探した。
ZENNがいたのはパウダールームだった。
廊下にこぼれてくる光から、マリアは中がかなり明るいのを察し、ドアを開けるのをためらった。
が、仕方なくノックをし、ドアを開けた。瞬時にマリアは後悔した。
まばゆく感じられる光のなかで、すっきりした素顔のZENN。
それにひきかえ、彼の向こうの大きな三面鏡に映し出された自分は…さぞZENNも興ざめしただろうと思われた。
黒いドレスはともかく、立たせていた髪は寝てしまい、紫のルージュもとれて…追いうちをかけたのがZENNのそっけなさだった。
まだいたのか、とでも言いたげな視線をくれると、
「どうもおつかれさま。用があればまたこっちから連絡するよ。」
部屋のドアはオートロックだから、勝手に帰っても一向に差つかえなかった。
二度と入れぬ部屋だろうと思うと、ドアを永久に閉めてしまうのが、マリアにはどうしてか惜しくて仕方がなかった。
(この章終わり)
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