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第2話の4(←マリアの君と仲間たち)

 契約書の準備ができたのでできるだけ早く来てほしいというのだった。マリアがひっかかったのは、仁の説明にグランデに関することが一つもなかったことだった。 (本当にZENNさんは話をしてくれたのだろうか…)  他のメンバーにはあまり言いたくないことだった。  その日の夜、マリアの部屋でミーティングが始まると、 「重なる時って重なっちゃうんだよなあ。もっと早くメジャーから来ればよかったのに。」  直接話を聞いたCUEが特に困っていた。 「ギルティーの方を、時間稼ぎする? その間に、メジャーの方と話してみる? 」 とりあえずのシヴァの提案だったが、ギルティーの都合とはいえ内定からの日数が空き過ぎてしまい、契約の意志がないと取られかねなかった。CUEはまた困ったように、 「俺の方も、あれから情報収集はしたんだ。先輩のバンドは何でインディーズに戻ったのか。でも、誰も教えてくれないんだ。それどころか、お前はギルティーに行くんだからいいじゃん、て言われたりして…」 ため息をつくCUEの表情を見ると、口には出さないまでも、ねたみそねみのようなものも匂わせられたのだろうと想像はつく。 「何を話しても、『かもしれない』なんだよな。マリアのお父さんのルートだと、会社は大きいけどポップス系にされそうだし、先輩の方の会社だと、ロックの老舗だけどプロをインディーズに戻らせたくなる何かがあるのかもしれない。ギルティーだと…俺達のやりたいようにやらせてくれるかもしれないけど、インディーズだからプロに行けるか…」 CUEには珍しい弱気な口調だった。  「堂々めぐりなんだよ。」 いつも通りのMIKUのボーカルらしい美しい声の張りに、雰囲気の暗転が止められたようだった。そして、さらにシヴァがこんなことを言い出した。 「ねえ、俺達って、何が欲しいんだろう?俺達に大切なことって何? 」 みんなは考え込んだ。シヴァは続ける。 「あのさあ、俺達の本当の姿を客にぶつけることなんじゃないのかなあ。それで、受け入れられなかったら俺達はこの時代には早すぎたってことで。」 このオチにはみんな笑った。 「だから、たとえインディーズであっても、俺達に体質が近そうなギルティーの方がいいんじゃないのかなあ。」 「でもさ、シヴァ…」 後ろめたさからかマリアは反論してしまった。 「プロを目指している俺達が、そんなにピュアで諦めがいいのっておかしくない? 受け入れられないなら受け入れられる方法を…」 するとシヴァはにっこりと笑い、意地悪言うつもりはないんだけど、と前置きした上で、 「もちろんそれは必要だけど、当の俺達がしっかりしてなきゃ、ってことになるよね? 」 「ところで、俺達の体質、って? 」 大きな無邪気な瞳でMIKUは尋ねる。タカネがあっさりと答える。 「お祭り体質。」 また爆笑だった。

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