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第3話の7◆友達が増えた?マリアの君
「年いくつ? 十五? 十六? 」
「十六。YOUさんは? 」
「二十一。名前は、なんていうの? 」
「由真。加藤由真。」
「俺はね、松岡優輔。」
「へえ、そんなカッコいい名前なんだ。それでYOUさん、ていうのね。」
「俺の部屋、相当ボロいから。驚かないで。」
「私のウチもそうなの。」
「いや、絶対、俺の勝ち。」
しかし、部屋に着くと由真は驚かなかった。間をもてあましたYOUは冷蔵庫を開けた。
「ウーロン茶しかないんだよねえ…ビデオでも見る? 」
「うん。何の? 」
「CUEがローディー見習いやってたバンド。ROSEと一緒にライヴハウスでやってた頃の、貴重な映像。非売品。」
すごい、と言うので、デッキに入れた。が、ベッドに寄りかかるように二人で座った途端、ビデオはどうでもよくなった。
「それにしても、この服すごいな。自分で縫ったの? 」
「ううん。似たような服買って、改造したの。私、家庭科系、得意だから。」
メークがかなりとれてきていて、彼女の横顔には幼さが見える。
「こんな時間まで、一人であそこにいたの?」
「うん…」
彼女は口ごもると耳まで真っ赤になった。
「…もう一度YOUさんの顔、見たかったから…」
「嬉しいこと言ってくれるじゃん。バンバン見て。」
はにかみながら笑う由真を見ながら、こんなに近くにいても、どうしてか手を出したいとは思わなかった。
ブリーチした茶色めの髪にひき立たせられる、二重の大きな瞳が印象的なはっきりとした顔立ちの子。大人びた綺麗さからは意外な、幼さ、可愛らしさがYOUの恋愛のスイッチを妨げている…というより、そういった関係とは無縁の、天真爛慢な存在でいて欲しいと思わせるのだ。だから、今夜限りのつきあいにはしたくなかった。
「ねえ、もうこんなに遅いからさ、いちおう家に電話した方がいいんじゃない? 今日は友達のうちに泊まります、って。」
「えっ…私、帰ります。」
「由真ちゃんベッドに寝ていいからさ。俺、下で寝るから。朝までおしゃべりしようよ。」
「…」
「泊まっていってほしいの。このまま帰したら、もう友達になれないような気がして。」
もちろん口説くつもりなんかない。それがわかって由真はどこかがっかりもしているようにも見えた。が、うなずくと、
「電話はしなくていいんです。今の時間うちの親仕事だし。それにぜんぜん私のことなんてかまってないから。」
恐ろしく冷ややかな口調は、YOUが何か冗談でも言わなければと思うほどだった。
「女の子はそうもいかないんじゃない? こらあ、なんてオヤジさんに怒鳴り込まれるの、俺ヤだからね。」
「…ああ、私、父親って生まれた時からいないから…」
目をそらしたつらそうな表情に、YOUは言葉を失った。
「…あ、ごめん…」
「ううん…」
「何ていうか…俺も似たようなもんだからさ。親なんか、生まれてきた状況なんか関係ない、自分は自分て思った方がいいんじゃないかと思って。」
「YOUさんも、お父さんいないの? 」
(<YOU>は<マリア>になる前のステージネームです)
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