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第3話の13◆取り戻せる?マリアの君

「YOU、最近元気ないね。」  最初に声をかけてきたのはシヴァだった。YOUは曖昧に微笑むしかなかった。 「あのコスプレの人…」 シヴァがまだ何か言いかけるのを、YOUは無視して立ち上がった。その後、ホームグラウンドでのライヴの時、自分達を待っているファンの中に由真を見かけたのもシヴァだった。自分と目が合ったので彼女はあわてて逃げたのだろうと、彼はずっと気にしていた。  ライヴの盛況は相変わらずだったが、ここで何かもう一発、ステップアップが欲しい時期だった。そうでなければ観客は飽き、離れて行ってしまいそうだった。  そんな時に嫌なことが起こった。CUEが一回だけの約束で、例のバンドのローディーを頼まれたのである。貴重な練習日がつぶれたこともあり、その日のライヴには、他のメンバーはみな、顔を出した。 「みんなCUEをあてにして…あれじゃあ重宝されて次も頼まれちゃうよ。」  CUEを残して帰ってきたが、シヴァは頭に来て仕方がないといった様子でYOUの部屋についてきた…と、アパートの階段を登ると、ドアの横に誰かがうずくまっていた。 「由真? 」 間違いなく由真だった。言葉もなかった。もう一度会えたことがただただ嬉しかった。 「この前、ライヴの後、いたよねえ…」 二人をつなぎあわせようとするようにシヴァが言ってくれた。由真は泣き顔を見せるのが恥ずかしいくらい泣いているようで、目を上げずにうなずいた。 「俺、失礼するよ。」 ごめんな、とシヴァの背中に言うと、由真に、 「中、入れよ。」 と優しく声をかけた。しかし、組んだ腕で顔を隠した彼女はなかなか立ち上がれないようだった。YOUは彼女の目の高さに合わせようとしゃがみ込み、勇気を出して肩に手をかけると、肩を優しく揺すぶった。作ろうとしても笑顔は作れなかった。とうとうYOUは由真を抱き締めた。由真はわっ、と声をあげて泣き出した。 「戻ってきてくれたなんて嬉しい。俺ずっとお前を探してた。俺が悪かった。また前のように仲良くしてなんて言ったらだめかなあ。」 由真は驚いていた。そして、また大声で泣きながらYOUにしがみついてきた。 「お母さんと、ケンカでもした? 」 由真は返事をしない。 「今日は、このまま、泊まってけ。」 「いいの? 」 やっと口を開いてくれた。 「俺はいいよ。由真の方こそ、それがバレたら困る彼氏とか、もうできちゃった? 」 ううん、とかぶりをふりながら、由真はまた涙だった。 YOUは、彼女が話してくれるまでもう何も尋ねないことにして、由真を部屋に招きいれた。  ベッドに寄りかかって座り、由真を抱きかかえるとYOUは、自分のことを話した。由真の姿を見に行ったこと、でも、見かけても声はかけられなかったこと… 「私も、YOUさんに会いたかった。でも…」 (<YOU>は<マリア>になる前のステージネームです)

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