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第4話の2◆先輩と飲むマリアの君

 会場ではCDの他、ポスターや写真の売り上げもよく、回収されたアンケートでの評判も上々だった。インディー・デビューしたばかりだというのに、他のバンドより頭抜けて華のあるステージ…それはMOONのファンばかりでなく、ギルティーのファン、ZENNのファンまで狂喜させていたのである。  当然それはみなの知るところになり、ツアーが終わると、「ヒットのお祝いをしてやるから」とMOONのメンバーは麗華にいつかの居酒屋に呼び出されていた。まだメンバー全員で歩いていても騒ぎになどならなかった。 早めに店に着いたのだが、もう先客がいた。  上座になんとZENNが。そして、その横にROSEのボーカリストのSHO。  マリアは、ZENNの姿を見ての動揺を隠すのに必死だった。しかし、ZENNの方はいつも通りで、メンバー全員に、SHOをひきあわせると、 「全国ツアー、おつかれさま。」 とねぎらいの言葉をかけてくれただけだった。  その時、襖が勢い良く開き、金髪の男が飛び込んできた。日頃の落ち着きはどこへやら、ZENNは両手を広げて彼を迎え、二人はコミカルに抱擁しあっていた。男は、ギルティー第二のバンド、サディスティック・エモーションのベーシスト、ニッキーだった。ROSEのローディーをやっていたこともあって、ZENNの特にお気に入りとは聞いていたが、こうも見せつけられると、マリアはねたましくなる。 「ああ、ニッキー、紹介するよ、この五人がMOON。」 挨拶を交わすともう軽口だった。 「どの子がマリアちゃんなの? 」 「彼。」 ZENNの手の行方を追って、ニッキーは、 「この気の強そうなエラ張り君のどこがマリアちゃんなの? 」 「最初見た時は化粧してて、かわいらしかったのっ! 」 子供のようにムキになって言い返すZENNに爆笑した。ピンクの靴下で皆を跨ぎ越しながら今日の幹事の麗華が入ってきて、 「だから俺もあの時言ったろう。マリア、名前、変えてもらえ。」 「いえ、俺はマリアですから。」 「ほら見ろ。」 「偉いっ! 」 勝ち誇るZENNに口添えするようにニッキーが言うのに、 「お前が言い出したんじゃねえか。」 あきれかえったSHOの一言。またみんな笑った。豪快に見えて、そのくせ、新人をしっかり主役にしてくれるニッキーの気配りにみんな感謝していた。その間に、シークレット・ラヴァーズのミツグ、レイジー・スレイジーのSAKIとHIROが入ってきた。優しく迎え入れられているものの、やはりメジャーにまで行っている先輩には雰囲気も負けているような気がして、マリアは悔しかった。 「ZENNちゃん、そろそろ始めようぜ。」

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