41 / 100
第4話の3◆武道館だよマリアの君!
みなノーメークではあるし、服もTシャツや革ジャンの普段着なのだが、黒だけでなく赤やら金やら茶色やらの長髪のミュージシャンが十二人も揃うと、そぐわない日本間でも壮観だった。
しかし、ZENNは、
「これしか集まらないのか? アナスタシアとディケイドは? 」
移籍組のことを尋ねた。が、麗華の反応は冷ややかだった。
「ツアーの最中だよ。もういいんじゃない?あの人たちは。」
マリア達には事情はわからなかったが、ZENNは諦めたようで、社長挨拶を始めた。
「見ての通り、仕事が多くて、全部のバンド全員が揃えないほど、我らギルティー・レコードは発展しました。今日はその七番目のバンド…生え抜きでは五番目のMOONのアルバムヒットと全国ツアーの成功を祝って、ささやかではありますがこのような席を設けさせていただきました。ではギルティー・ミュージックとMOONの成功を祝って、乾杯!」
拍手が止むと、麗華はあわてて、
「ZENNちゃん、酒がまわんないうちに大事な話をしろよ。」
「そうだね。えー、今年も、ギルティーズをやります。」
ギルティーズ、というのはギルティー・レコードに所属中、もしくは出身のバンドが一堂に会するイベントで、ラストは大セッション大会になる。
「場所は武道館。2DAYS。時期は十一月上旬。時期が良くないけど、みんなのスケジュールを考えるとこの時期しかないんだ。」
「俺達の東京ドームもあるからね。」
麗華の何気ない「東京ドーム」には、MOONも恐れ入るばかりである。
それを察すると、今度は麗華は、みんなを見渡し、
「みんなも早く東京ドームまで来いよ。一週間びっちりこのメンツの日替りをやろう。」
うなずかなかったのは物静かなミツグだけだった。
彼はただ笑顔を浮かべただけだったが、別に誰もとがめない。
今のところ、ドームに迫る勢いはニッキーのバンドまでで、レイジー・スレイジーは武道館の2DAYSはきつい、といった状態だった。
ミツグのところは武道館にいけるかどうかというところ。
移籍組のアナスタシアはメジャーデビューしたばかりで、ディケイドはなかなかブレイクせず、インディーズの三枚目を出す予定になっていた。
MOONと先輩バンド達にはそんな距離があった。が、
「で、今年のギルティーズのトップバッターは、MOONだから。」
ZENNの言葉には、驚きのあまり、声が出なかった。
ともだちにシェアしよう!