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第4話の5◆それだけ?と嘆くマリアの君
麗華とSHOは笑っていたが、他のみんなは見たことがないらしく話に乗ってこないので、ニッキーはマリアに矛先を向けた。
「マリアは見たんだろ? あのすげえゴージャスな天蓋付きのベッド。」
どうしてニッキーが知っているのか、マリアは返事に困っていた。
「何、マリア、ZENNちゃんのうちに行ったことあるの? 」
麗華をはじめ、シヴァ達もびっくりしていた。マリアが困っていると、ZENNがようやく口を開いた。
「ほら、半沢さんのパーティーの帰り、遊びに来させたら、俺、途中で具合悪くなっちゃって…マリアに介抱してもらったんだ。」
「何? それじゃあ契約前から社長の介抱させられてるの? ひでえ。」
その時は誰も何も言わなかった。みんなに笑われて、マリアはほっとしただけだった。
その後はそれぞれ談笑だったが、ZENNはニッキーとひたすら飲み、またニッキーが手招きしたのはタカネだったから、マリアは気後れしてZENNに話しかけることができなかった。
宴もたけなわになると、みんなに気をつかって彼は自らビールを注いで回ってくれたが、マリアが言えたのは、「先日はありがとうございました」の一言だけ。ZENNの方も、いやいや、と言ってくれただけだった。
それが、あの日からマリアが悩み続けたことに対する答えのすべてだった。
二次会も二手に別れた。次の日が早い、ミツグ、SAKI、HIROは帰ってしまい、できあがったZENNはこれまたできあがったニッキーの家に行くと言ってきかない。
「ZENNちゃんの完全犯罪さ。浅川君達には迎えに来なくていいって言ってあるんだって。俺、心配だから二人についてくよ。」
あまり飲んでいなかったSHOは麗華にそう言うと、MOONに別れを告げ、タクシーに向かって無邪気に手を振る二人の方へ駆け寄っていった。振り返ったニッキーが叫ぶ。
「タカネ、お前も男なら武道館でかかってこい! 」
「わかりましたあ! 」
元気よく答えるタカネの横で、麗華も、
「ZENNちゃん気をつけてなあーっ。お前に何かあっても、俺とMOONでがんばるからなあーっ! 」
ZENNは振り返り、笑いながら、
「縁起でもないこと言うなあーっ! 」
と言い返すと、タクシーに詰め込まれて、夜の街に消えて行った。それを見送ると、麗華は急にすまなそうな表情になった。
「なんか寂しいことになっちゃってごめんな。みんな忙しいから…」
「いいえ、お招きいただけただけで俺達は…」
「でも、武道館の時はこんなもんじゃないからな。」
そう言うと彼は急に元気になり、いい店知ってるんだよ、と先頭を切って歩き始めた。
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