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第4章の8(←マリアの君の身の上話)

 マリアは打ち合わせの帰りにちらと見かけたZENNの母、ギルティーの役員もやっているという立花百合子氏の姿を思い出していた。 高級そうなローズピンクのスーツに身を包んだ、背の高い、目鼻立ちのはっきりした女優か何かのような華やかな美貌の女社長。 ZENNを溺愛するあの母の資金援助のおかげでギルティー・レコードは設立できたのだという噂だった。  それに比べて、自分は…マリアの身の上に、ZENNは目を丸くした。 「バイオリンだって、ものごころついてから俺が父親のように楽器をやっていたかった、ってゴネたらかわいそうだと思ってやらせたそうなんですけど…音大中退の親父はピアノで、同じ楽器やらせるのも嫌だからって母親はバイオリンを…。」 言葉を失っているZENNを見たマリアの方がかえって申し訳なくなり、 「いや…でも、それだから、俺って悲しみとか、あまり感じずにいられたのかも。単にぼんやりしてるのかもしれませんけど。」 二人は話の接ぎ穂を失った。が、マリアが、 「ZENNさんは、お父さんに似ていらっしゃるんですか? 」 「うん。そっくりだ。」 そして、ZENNは口を開きかけたが、ためらった後、黙った 。

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