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第4章の7(←皇帝ZENNの身の上話)(抜けてましたすみませんby作者)
「マリアも、一本どうだ。」
ZENNの声の、意外な暖かさに、マリアはほっとしていた。
「いえ、俺は…」
「禁煙してるのか? 」
「いいえ…それじゃあ遠慮なく。」
口にくわえると、ZENNが火をつけてくれた。
恐縮しながらも、嬉しかった。ZENNと同じように腹這いになって少しリラックスさせてもらった。
が、
「まわりには本数を減らせといわれてるんだが…なかなか…自分でも、気にはしてるんだ。親父が、俺が十才の時、三十六で、胃ガンで死んでるから。」
マリアは言葉もなく、ZENNの横顔を見つめるばかりだった。
「いやな経験だよな。でも、お前ならわかってくれると思った。」
そうと答えられないマリアは悲しかった。
「…うちは建設会社で…オフクロと親父はすごく愛し合ってたから、親父が死んだ後は、オフクロが社長で、必死にやってたよ。そんな時に俺にできることと言えば、お手伝いさんにも迷惑をかけないいい子でいること。あと、親父の期待に応えて、立派なピアニストになるよう、練習すること。」
無力だった…とため息をつくZENNの様子は痛ましく、マリアは本当のことを白状せずにはいられなかった。
「でも…ZENN さんは、まだ…お父さんとの思い出があるし、お母さんの愛もある…」
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