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第4章の10(←マリアの君、帝王学を受ける?)
新品らしいそれを羽織ってマリアはZENNの後を追ったが、ドアを出てすぐに、戻って来た彼にぶつかった。
彼が抱えてきたのは、ドン・ペリニヨンのロゼだった。
マリアは恐縮するばかりだったが、そんなことには頓着せずに、ZENNはマリアにフルートグラスを持たせるとこう言った。
「マリアと、MOONの、メジャー・デビューを祝して、乾杯。」
「えっ? 」
「話がいくと思うけど、グランデがもう動いてる。お前達がうんと言えば、グランデの補助金ですぐに事務所は立ち上がる。お前達の実績は、予想以上だったから。」
そこまで言うと、ZENNは微笑んで首をかしげ、それでは乾杯しよう、と言う。
マリアはためらうことなく、自分のグラスをZENNのグラスに、チン、とぶつけた。
「どうして俺達が帝国、として徒党を組むかわかるか?」
「すぐれたバンドをアピールしやすくするためですか?ブランドとして愛されやすいから…」
「そうだ。俺達には、日本国内で売って行くしかないからな。ヘビメタやハードロックは知らないが、俺達には内需拡大しかない。」
でも、とZENNは付け足した。
「俺は数を競いたいわけじゃない。ただ、もっともっと、日本人にロックを浸透させたいだけなんだ。でも、ロック以外の音楽も根強いし、チャートを賑わわせている。それを俺は揺すぶりたいんだ。麗華も同じさ。あの時、ドームでやりたくもなさそうだったミツグも同じさ。いい音楽を、自分が信じる音楽を、ただ広めたいだけだ。数字で満足するような趣味は俺にはない。」
そこまで自信たっぷりに語っていたZENNは、突然声のトーンを落とした。
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