52 / 100

第4章の14(←マリアの君のつかの間の休息)

 あとは名古屋と大阪、そして東京でのファイナルを残すのみ、という状態で、二十日ぶりに、マリアは自分の部屋に帰った。  鍵を開けると、 「マリア、お帰りなさい! 」 「由真ーっ! 」 抱き付かれた由真の方が驚いていた。 マリアにしてみれば、ツアーの成功を分かち合う相手がいるのは嬉しいことだった。 が、なぜ平日の昼間、ここに由真がいるのか。 「由真、学校は? 」 「風邪でーす。」 そんな冗談を聞きながらも、マリアの体の方はそれどころではなかった。 「マリア、やせたんじゃない? 」 「そう? 」 ごはんは、と言われても、 「いや、それより眠らせて…」 と、ついベッドにもぐりこんでしまう。 洗濯物は? 由真の声が遠い。勝手にバッグ開けていいの…いいよ…  マリアが目覚めたのは真夜中だった。  次の日由真は学校の帰りに寄ってくれたので、ようやく話らしい話ができたのだった。

ともだちにシェアしよう!