70 / 100

第5章の15←マリアの君のクリスマスイブ

 その時期はROSEの東京ドーム4DAYSだったからである。ラストはクリスマスイヴで…  打ち上げの後、夜も明ける頃、怪訝そうな周囲を尻目に、マリアはZENNのベンツに乗せられていた。 逆らうことはできなかった。 それは数時間前の、五万人の大観衆の熱狂が目に、肌に焼き付いて離れなかったからだった。  あれだけの熱狂を生み出していたのはROSEであり、今自分の横に座っているZENNだった。  それにひきかえ、自分の存在が、自分のやっていることが、あまりに小さいもののように急に思えてきて、惨めだったからである。  そして、次の日の夕方まで、ZENNに言われるまま、例のベッドで、ドン・ペリのグラスを片手にうだうだ過ごしていた。  大晦日から新年のカウントダウンは、ライヴハウスのイベントで迎えた。   それはマリアにとって、そしてMOONにとって、輝かしい未来の始まりのはずだった。

ともだちにシェアしよう!