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第6章の3←ZENNがいながら…のマリアの君

 そんな忙しいさなかに、とうとうマリアは由真と暮らすことを決断しなくてはならなくなった。就職の決まらない彼女は母親ともめにもめていたからだ。 ―確かに仕事は選んでたんだけど…マリアの彼女だからあまり変な仕事もできないし、勤務時間が不規則なのもだめだし、って。 そこまでは、高校を出てバイト暮らしだったマリアが偉そうに言えた義理はない。だが、次の言葉がひっかかった。 ―アイツに、マリアと付き合ってることがバレちゃったの。で、いろいろ言ったんだけど、ミュージシャンはだめって言うばかりなの。すぐに捨てられるわよ、って。私が、マリアはそんな人じゃない、って言っても、仕事も決まらないくせにガタガタ言うなって。決まらないならウチの店で働けって。 ―店って…それだけは俺、嫌だ。 ―私も。どうしようもない店だし、何より、私の給料までアイツに持っていかれそうで… マリアはため息をついた。ZENNの顔が頭をよぎった。しかし… ―…由真、俺んとこに来るか? こっちで一緒に暮らして、バイトでも探すか? まだ、食わせてはやれないんだけどさ… 言いながら、マリアはなんとなく誇らしい気持ちがわきあがってくるのを感じて いた。近いうちにお前を食わせてやれるようになる。幸せな暮らしをさせてやる… ―…行きたい、今すぐでも行きたい、マリアのところへ…

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