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第6章の12←マリアの君、というカオス。
―マリアはそれくらいのことで音をあげるガキじゃない。
何より、俺の部屋に遊びに来てることをどうして麗華に言わないと思う?
俺にも麗華にも通じていたいっていう、あいつのこざかしい考えからじゃないか。
―綺麗、あざとい、こざかしい、か。三拍子そろった大したヤツというわけか。
そんな冗談で紛らせたくなるほど、麗華はあやういものを感じていた。
新人とよく話すのはZENNにしろ麗華にしろ、自分の方も学ぶことが多いからである。
しかしそれが曲のできない最中というのは、ZENNがかなり苦しんでいるということではないのだろうか。
麗華がマリアと直接話ができたのは、サディスティック・エモーションのツアーのファイナルの打ち上げでだった。
気のきいた洋風の居酒屋で、珍しく元気のないマリアは、ニッキー達メンバーとタカネに少し話しかけられただけで、ぽつんと一人でいることが多かった。
麗華はマリアにいつもの調子で話しかけた。
マリアも笑みを浮かべたが、どこか虚ろな様子だった。
そこに麗華はつけ入ることにした。
「MOONは順調過ぎて、ずいぶんいじめられてるみたいだな。」
マリアは苦笑するだけだった。
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