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第6章の13←麗華の君、マリアの君にたとえ話。
「もっとひどいのが、お前とZENNちゃんが親密すぎるってやっかみみたいだな。ZENNちゃんのベンツの中でふんぞりかえってたとか…」
「あれは…」
「本当のことは聞いたよ。でも、俺は言ったんだ。『虎の威を借る狐』なんてマリアが言われてかわいそうだ、って。そしたら、ZENNちゃんは、とんでもない、マリアは虎の寝首を狙う黒豹だ、って言ってた。まだ子供だが、俺にさえなつかない黒豹だ、って。」
かすかにマリアは笑った。麗華は攻め込んだ。
「虎で思い出したけど、ガキの頃、俺は文武両道のガキでさ…晴れの日は野球、雨の日は図書館で読書だ。」
貸し切りの店の中で、隅の席に陣取っている二人に、近づいてくる者は誰もいなかった。
「それで一番覚えてるのが中国の少数民族の民話で、『猫のお師匠』って話なんだ。」
「麗華さんって、子供の頃からマニアックだったんですね。」
麗華は思わず笑ってしまった。
「いいから聞けよ。」
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