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第6章の14←黒豹?のマリアの君

 昔、山奥に一匹の虎がいた。 その頃の虎は図体ばかり大きく、何もかもさえない存在だった。 獲物をとるのも下手、逃げ足も遅くて人間にもつかまりそうになる…それで困った虎は、自分とはまるで正反対で、要領よく生きている猫にいろいろと教えてもらおうと弟子入りしたという。 猫の教えを受けて、虎は敵からも逃げられるようになり、狩りも上手くなっていったのだが…あろうことか、目の前の猫の師匠がなんともおいしそうに見えてきて、食べたくなっていったというのである。 「ある日、猫は一本の大きな木の前で虎に向かってこう言ったんだ。『もう教えることは何もありません。今日でこの講義はおしまいです』と。途端に虎は猫に襲いかかった。が、猫はひらりと身をかわして木に上ってこう言った。『お前の考えは読めていた。だから私は木に上る術だけは教えなかった』と。それで虎はいまでも木には上れないのです、チャンチャン、て話さ。」 マリアは目をそらし、押し黙った。麗華は少し困ってしまい、グラスに口をつけると、 「そういや黒豹って木に上れるのかな? 」 笑うどころか、マリアの顔からは血の気が引いているように、麗華には見えた。 「まあ、虎には虎の、黒豹には黒豹の持ち味があるだろうが…まあ、おとぎ話はこのくらいにして、マリア、真面目な話、ZENNちゃんに誘われても、あまり受けるなよ。その方がお前のためだよ。」 受けないでくれ、とは言えなかった。ROSEの弱みを見せるようで嫌だったのである。

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