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第6章の20←マリアの君にまでいたずら電話
着替えたらすぐにインタビュー場所まで行くつもりだった。
が、光のあふれる居間に、バイトに行っているはずの由真がなぜかいた。
マリアは動揺を隠すのに大変だった。
「あれ? バイトじゃなかったの? 」
「先輩に頼まれてシフト替わったって言ったじゃない。もー、マリアったらあ…」
冗談でふくれてみせる由真を、マリアは抱き締める。
オードトワレはかなり前からZENNと同じシャネルの「エゴイスト・プラチナム」にしているから心配ない。
それに最初に気づいたのはタカネで、すぐに取り繕ったものの、一瞬、困ったような顔をしたのがわかった。
陰口を叩いている連中はこれもいい証拠にしているのだろうとマリアは思った。
由真にじゃれつきながらふと見ると、電話の留守録のランプが点滅している。
「マリア、その留守電聞かないで。消すの忘れてたの。」
「何? 何なの? 」
「マリア、お願いだから…」
「どうして? 」
ムッとしてマリアは電話のボタンを押した。
「マリア、いたずら電話なのよ…」
抑揚のない、今どきの話し方の若い女の声。
―居留守使ってるようですけど…マリアの彼女に、今日はいいニュースをお知らせします。
マリアの本命は一緒に暮らしているあなたではありません。ROSEのZENNさんです…あなたはカモフラージュにしか過ぎません。
「な、何だよこれ…」
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