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第7章の2←マリアの君のいる時代

 また、ヒットはファンにも夢を与える。  自分の好きなバンドが売れるということはそのバンドが時代に選ばれているということである。  街にあふれる彼らの曲にファンは生きている時代を体感している。  ロックは確かに数字ではないのだが、ここまで大規模に展開してしまった以上、ある程度の業績を上げないことにはプロジェクトが前へ進んでいかないのだった。 こんなことデビュー前には想像してもいなかった。そしてそれは、どんなビッグバンドでも同じだった。 「もっと、わかりやすい曲、親しみやすい曲にしなきゃだめってことか。」 日本人の血中ロック濃度は本当に上がったのだろうかとマリアは思った。 「歌詞も、もう少し具象的で、はっきりと恋愛詞…? 」  永山社長の提案に、作詞担当のMIKUは頭を抱え込んだ。そんなことに悩みつつ、五人は雑誌の撮影やインタビューをこなしていく。

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