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第8話 真実の昔話

歳若い父と母が居て子供が居て……それがこの国の一般家庭と言われる形だ。 それから逸脱しているのだと初めて気が付いたのはいつのことだったか。 別に養父母であろうが、さらにそれが祖父母であろうが。その事に対して陰口叩かれたり奇異な目を向けられた記憶はない。 もしかしたら単に意識をしていなかっただけで、実際は皆不自然に思っていて、ただそれを正面切って指摘しない親切な者が多かっただけなのかも知らないけれど。 「太郎」 聞き慣れた優しい声に肩を震わせば、その柔和な顔がわずかに悲しげに歪められる。 ―――じーちゃんとばーちゃんが寄り添うように座る部屋の一室に、僕達4人が所在なさげに居た。 「最初に言っておくぞ、太郎。今まで真実を隠し通したワシらを許してくれ等とは決して言わん。……しかし今は聞いて欲しい。真実を、お前自身の生い立ちとこの世界の事をな」 本当の事を知る、というのはとても恐ろしい事だと思う。特に今まで信じてきた全ての事が砂上の楼閣の如く崩れ去っていくのだから。 だから未だ顔を上げられず、僕を見つめる2人を見ることが出来ずにいた。 「……」 「大丈夫か」 ぽん、と大きな手で頭を撫でられる。 でも、その温かな体温にすがりつきたいような気分になって却って良くない。僕は聞かないといけないのだけは理解していたから。 「大丈夫だよ……続けて」 小さく息を整えて、居住まいを正し顔を上げる。 「そうか」 じーちゃんは話し始める。 それは、年月にすれば途方もなく長い話で。しかし語るには呆気ないほどに残酷で無情な真実だった。

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