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第七幕
新たに天下のもとに据えられたのは、年端もいかぬ子供だった。戦も世の中の事もまだまだ知らぬ、甘やかされた箱入り息子であった。贅沢ばかりを身につけ、それはそれは傲慢で世間知らずそのものだった。
桃太郎に引き摺られ罪人の島に連れられてから、先ず待っていたのは報復という名の暴力だった。彼の父の暴挙への恨みがたくさんの拳となって降り注ぎ、生意気で反発心を剥き出しにしていた子鬼の牙を圧し折った。初めて味合う身体の痛みと向けられる怨恨に、子鬼は見事に直ぐ様根を上げた。情け無くも命を乞い、辺り構わず助けを求めた。
子鬼を救い上げたのは他でもない桃太郎だった。島人からの暴力と迫害から守る為、桃太郎は子鬼を幽閉した。
子鬼は処遇に対して不満を募らせていく。これまでは望めば何でも手に入り、何もせずとも存在を讃えられてきたのだ。豪奢な住まいとはうって変わり、日も射さぬような見すぼらしい家屋に閉じ込められ、与えられる食事も見た事もない粗末なものだった。
初日は泳がされていた。然し、二日目になると一つ文句を口にしただけで、体が吹っ飛ぶ程の力で頬を打ち据えられた。三日目には朝から食事を出されなくなり、四日目に食べ物を要求すると無様に地面に頭を押し付けられた。救いの手だと思っていた桃太郎は、よくよく見上げてみれば誰よりも悪鬼の様な顔をしていた。
七日経ち、桃太郎の機嫌を損ねぬようにと子鬼は見違えるほど従順になった。罪人と同じボロを着せられても身体が汚れ乱れていても気に留めなくなり、食事が粗末であっても、それが例え床に撒き散らされたものであっても這いつくばって口にした。生きるためには、なりふりなど不要であると叩き込まれたのだ。
十日目、そんな子鬼を桃太郎は初めて外へ連れ出した。幽閉していた家屋の裏で、井戸水を汲み上げ頭から子鬼を洗い流してやる。子鬼は体を清められる事が恩恵であるとその時思い込んだが、室内に戻されるやニオイのきつい丸薬を喰まされると、強引に閨に押し込められ何かの儀式のように組み伏せられた。抵抗すればまた苦痛が待っている。子鬼はそれを心身で悟っており、どうされても身動きが出来なかった。
洗われて裸になったまま余す所なく値踏みされ、鬼の陽物で容赦無く無垢を引き裂かれた。衝動が堪えきれずに呻いていたが、いつしか夢現の中にいるように視界がボヤリと霞み、痛みが遠のいていった。ふわふわと柔らかいものでひたすらに全身を擽られているような感覚と、時折押し寄せるように湧く激しく甘い感覚の波とに苛まれるようになる。いてもたってもいられないほど狂おしい全身の座喚きにあられもない声を上げながら、意識は浮かされたままひたすらに弄ばれる。一人だと思っていた鬼は二人、三人、四人と増えており、どの鬼に揺さぶられているのか全く分からなくなっていた。
どれくらい刻が経ったのか、気が付いた時には閨に一人だった。全身が痛んで動けず、頭痛がして何も考えられなかった。その日から、夕刻に水を浴びせられ、夜になると閨で夢現に堕とされるようになった。暴力で味合わされる痛みと違い、惑わされる甘い感覚は青い身体をあっという間に蝕み、僅かな迷いも食い尽くして毒されていく。快感を覚え虜になっていく子鬼に桃太郎は何度も優しく囁いた。
「お前が私に従い続ける限り、お前が真に望むものをこうしていくらでも授けよう…」
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