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第2話

「樹、待ってくれ!」 今日も今日とて篠木先輩は僕を追ってくる。サッカー部のエースは部活動だって忙しいのだろうに、なんで来るの!? 「あなたに名前で呼ばれる筋合いないですよ! 呼び捨てにしないでください!」 「何でだ!? お前は俺の『運命』なのに!」 「はぁ!? 冗談も大概にしてください、僕は先輩の『運命』なんかじゃありません!」 『運命』それはαとΩの中でも特別に結ばれる事を運命づけられている相手の事を指す。そんな2人の事をバース性の人間は『運命の番』と呼ぶのだけれど、そんな2人はお互い一目で相手を選び出し結ばれると聞いている。どうやら先輩はその『運命』を僕に感じたらしいのだけど、生憎僕の方は先輩に『運命』なんてこれっぽっちも感じてないから! 「俺はお前の為なら命だって賭けられる!」 「そういうの本当に迷惑! 止めてくださいって何度も言いましたよね!?」 僕は立ち止まり、追いかけてくる先輩に面と向かってもう一度「僕はあなたの『運命』なんかじゃあ・り・ま・せ・ん!」と言い切る。 「そんな訳はない! 俺ははっきり樹に『運命』を感じたんだ! この感覚が間違っているだなんてあり得ない!」 「そんなの勘違いです、それこそ絶対あり得ません! 先輩いい加減うざいですよ!」 「俺は! 俺は……今までの人生をサッカー一筋で生きてきた、だけど譲れない! お前の事は譲れない、樹が手に入るなら俺は俺の人生だったサッカーだって捨てられる!」 えぇ……なんか滅茶苦茶重いんですけどぉ。僕、そういうの好きじゃないなぁ。 「いい迷惑」 「俺は本気だ!」 「はいはい、そこまで言うならやってみてよ」 まぁ、やった所で恋人になるかどうかは別問題だけどさ。 「俺は本当に本気だからな!」 「だから好きにしたらって言ってるんですよ。僕は先輩がサッカーをやってようが辞めようがどうでもいいですから!」 「分かった」と頷いて篠木先輩は行ってしまったのだけど、何が「分かった」なのか僕には全然分からないよ。

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