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第3話

「榊原樹というのはどいつだ?」 篠木先輩とそんな会話をした翌日、教室に大きな男が現れた。たぶん間違いなく上級生、厳つい表情のその先輩は僕の顔を見るなり「お前が?」と不審気な表情を見せた。 「どんな美女かと思ったら、おかまじゃないか」 んなっ!? それ面と向かって僕に言う!? 確かにΩは男女の性差的には曖昧な部分があるからそういう性差別に晒される事はよくあるけど、こんな真正面からそんな事言われたの初めてだよっ! 「僕はただのΩです、そういう差別はいけないと小学校で習いませんでしたか?」 「あぁ、Ω……Ωねぇ、実際にいるもんなんだな」 バース性の人間は数が少ない、この世界のほとんどはβの人間で構築されていて、αと呼ばれる優秀な人間は多くても一学年に2・3人、Ωは更に少なくて僕の学年には僕一人しかいない。 けれど、そんな少数のαに支配されたこの世界ではバース性だというだけで色々な優遇が受けられる。それをやっかむ人も多いのだけど、僕の周りは今までわりと平穏だったから、こういう差別発言は初めてだ。 先輩に促されて僕達は教室を離れ、少し人気の少ない階段の方まで移動する。完全に人気のない場所だと何されるか分からないし危険だから常に退路は確保しつつ距離も詰めないよ。だってこの人怖いもん。 「先輩、僕に何か御用ですか? 用が無いのでしたら失礼させていただきます」 「用ならある! 篠木に退部を唆したのはお前だろ!」 「篠木先輩?」 「そうだ! せっかく今年も全国への切符を手に入れたってのに、エースが抜けたら話にならん! しかも奴は特待生だ、部を退部すれば即退学だ」 あぁ、この人サッカー部の人なんだ。篠木先輩、本気でサッカー辞める気なのか? 「篠木がΩを襲って一週間の謹慎を受けたのは聞いているが、そこからあいつはおかしくなった、お前篠木に何をした!」 「僕は何もしてませんよ。何なら僕の方が被害者です。篠木先輩は勝手に暴走しているだけで、僕だって篠木先輩には迷惑してるんです」 ホント言いがかりも甚だしい、先輩は勝手に辞めると言い出して、勝手に暴走してるだけなのに、それを全部僕のせいにされたら堪らないよっ!

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