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第5話

「榊原君! さっきの先輩たち何だったの? また告白?」 教室に戻ると同中だったクラスメイトの女子が興味津々で僕の前へと現れる。はっきり言って僕、男にも女にもよくモテるからね、こういうの割と日常茶飯事で、それに慣れきっている友人は「ご苦労さま」と、僕の肩を叩く。 それにしても先輩『たち』と言ったって事はどこかで僕を見ていたな? 見てたんなら助けてくれてもいいのに。 「今のサッカー部のキャプテンとエースの人でしょ? 相変わらず榊原君は上玉ばかり釣りあげるよね、羨ましい」 「羨ましいなら持ってってよ、好きでもない相手に惚れられるって結構疲れるんだよ?」 「うわぁ、モテる人間の上から発言、そういう事ばっかり言ってると嫌われるわよ?」 そう言って彼女はけらけら笑うのだけど、上からって言うか真実なのにな。モテたくてモテてる訳じゃないやい! 「あの先輩達、私テレビでも見た事ある! 確か去年の全国大会良い所までいったのよね……動画とかあるんじゃないかしら?」 そう言って彼女はすいすいとスマホを操作して動画サイトを立ち上げると僕にサッカーの試合の見どころダイジェスト的な動画を「ほら」と見せてくれた。そこに映っていたのは確かに篠木先輩とさっきのキャプテン、篠木先輩はセンターフォワードでキャプテンはゴールキーパーか……あれ? 予想外、篠木先輩がちょっと格好いい。 エースストライカーである篠木先輩は2人のディフェンダーの間をすり抜け敵陣ゴールへ見事なシュートを決めてみせる。その姿は僕に縋り付いてくるようないつもの瞳ではない凛々しい顔つきで、あの人こんな顔も出来るんじゃないか……と少し微妙な気持ちになった。 その日、僕は家に帰ってから動画サイトを漁って先輩の出ている試合を幾つか発見した。その試合のどれを見ても先輩は目覚ましい活躍をしていてキラキラしている。 「何だよ、あの人すごくサッカー上手だし格好いいんじゃん。何であんなに簡単に辞めるとか言うんだろ? 意味分かんない……」 僕は部屋でクッションを抱えてタブレットを見やる。ゴールを決めて満面の笑みでチームメイトにもみくちゃにされている先輩はどう見てもキラキラの好青年、なのに何で? なんで僕の前ではあんななんだろう? どうにも納得いかない僕は画面の中で格好良くボールを蹴る先輩を見やる、あぁぁぁぁ……もう、もやっとする!!!

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