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第22話

「ギャラリー・パーマーって、ビジネス閉めるまでは、業界では有名な店だったようよ。ローゼンタールの御用達店だったらしいし」 「……ローゼンタール?」  つい最近どこかでその名前を聞いた、とリチャードは記憶を探る。 「トリノの聖母子の元の持ち主……」  リチャードは思い出して驚く。つい先日、クラレンス・オークションハウスで、その名前を聞いたばかりではないか。  ――もしかしたらトリノの聖母子を、ローゼンタール家へ売ったのが、ギャラリー・パーマーだったのかもしれない。  だが、そのギャラリー・パーマーのオーナーは、四年前に自殺している。一体四年前に何があったのか? やはり誰か詳しい事情を知っている人間に話を聞かない限り、これ以上は憶測の域を出ない。  ――やっぱり何か四年前にあったんだ。トリノの聖母子、レイ、ローゼンタール、ジュリアン・テイラー……そしてギャラリー・パーマー。これらは全部繋がってるに違いない。だが何がどう繋がっているというのだ?  リチャードの目の前に、カードが並べられている。だが、そのカードの意味するところがはっきりと分からない。分からないので、必然的に次の手を打てない。  リチャードはもどかしくて、たまらない気持ちになる。 ――とりあえず、聞き込みに行くか…… 「今日は戻れないかもしれない。いいかな?」  長期戦になるのを予測して、リチャードはセーラにそう言う。 「パトリックかクライブ連れて行く?」 「いや、彼らは自分たちの抱えている事件で忙しいだろう? 聞き込みならユニフォーム(制服警官)時代に散々やってるから慣れているよ。大丈夫だ」 「何かあったら連絡して。すぐに調べるから」 「分かった。よろしく」  リチャードは聞き込みの為に、オフィスを出るとボンドストリートへ向かった。

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