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第34話
家に戻ってから三日間ほどは何もせず、ただぼうっとして過ごした。
信じていたジュリアンに裏切られたのが、一番辛かった。
僕を好きだ、って言ってくれたのは嬉しかった。だからこそ、彼の気持ちに答えてあげられないのが申し訳なかった。
でもそれと薬を盛って、僕の体を自由にしようとするのは別だ。
そんな卑怯な真似をする人だとは思ってなかったから、余計にショックだった。
三日目の夜、ギャラリーを閉めた後のローリーが、部屋に上がってきた。
「レイ、明日からギャラリーに出て」
「……どうしても?」
「どうしてもだ。きみのギャラリーなんだよ? 三日も休めばもう十分だろう? いや、三日間どころじゃない、きみが自分のギャラリーを放ったらしにしてたのは。いい加減に、子供みたいな真似はもう止めろよ」
ローリーが言ったのは、事実だった。
僕は20歳にもなって、まるで拗ねた子供みたいな態度を彼に対して取ってたんだ。ずっとローリー一人に、何もかも全部押しつけて、自分はやりたい放題で……そう自覚した途端に突然恥ずかしくなった。
「……ごめん、ローリー。僕は本当に子供だったんだ。何も知らなくて、我が儘で、自分勝手で、傲慢で……」
「若さって、そういうもんだろう?」
ローリーはそう言うと、僕の頭をぽん、と軽く叩いて「明日の朝、10時半にギャラリー開けておいて。僕ちょっと寄り道してから来るから」と言って帰って行った。
翌朝、僕はローリーに言われた通り10時半にギャラリーを開けて、デスクの後ろに陣取ると、ぼんやり外を眺めていた。
このギャラリーの何をどうすべきなのか、それはこれからローリーに一つずつ聞いて、学んでいかなければならない。もう我が儘は許されないんだ、って分かっていた。今までずっと、自分勝手な行動ばかりして、彼には迷惑をかけ過ぎていたから。
ふいにドアベルの音がしたので、ドアの外に目をやった。
そこにはジュリアンが立っていた。
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