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【雷だけは勘弁して ① 一緒にどこか、遠くへ】
◆じれったいお題ったー 様より
~お題【一緒にどこか、遠くへ】~
【キャラ紹介】
*日向 出雲
ゲーマー男子高校生。周りからはクールだなんだと評価されているけれど、心の中は割と騒がしいタイプ。ただそれを表に出さないだけ。
*陽向 照
非ゲーマー男子高校生。周りからはムードメーカー的存在だと思われているけれど、本人はちょっと不服。できればカッコいいとか言われたい。
いつものように僕の家に来た照 が、真剣な表情を浮かべながら呟いた。
「出雲 ……一緒にどこか、遠くへ行こう」
突然のプロポーズ的展開。絶賛片想い中の僕からするとキタコレ案件。ニヤニヤ不可避。脳内ファンファーレ待ったなし。
……とか言いたいけど、照はそんなことを言う奴じゃない。きっと絶対確実に裏がある。
さて、そこを考えるのが僕の仕事だ。ゲーム的に言うとミッションか。何だそれ、燃える。
ソファに座りながら僕を見つめる照を見つめ返し、僕は頷いた。
「今日返ってきたテストの結果が悪かったから家に帰りたくないって比喩? それとも、今日出された宿題が面倒くさいから現実逃避? それ以外なら……僕が持ってた消しゴムの角を勝手に使ったことへの罪悪感?」
「全部正解だよ馬鹿ッ!」
よし、ミッションクリア。報酬は好きな子からの暴言。割に合わねぇ。
照は頭を乱暴に掻いて、あーだこーだと文句を垂れている。
「アァァッ! 学生の本分が勉強って誰が決めたんだよーッ!」
「法律じゃない?」
「総理大臣になってそんな法律変えてやる!」
「嘘だけど……まぁ、その頃には照、もう学生じゃないから関係無いけどね」
「じゃあいいや!」
相変わらず馬鹿丸出しの照はそう言うと、俺から視線を逸らしてスマホを弄り始めた。どうやらネットで【格安・旅行・遠く】と検索しているらしい。うん、ヤッパリ馬鹿。
――けど、照と二人で遠くに行く……か。
照のことは好きだけど、僕は二人で旅行に行くとか……そんなの、考えたことなかったな。
――二人で一緒の部屋に居られる今の現状に、満足しているから。
「はぁ……ヤッパリ、金かかるかぁ」
照はそう言って、肩を落としている。どうやら結構本気で遠くに行きたいらしい。
――次のミッションはこれか。
「照、遠くに行きたいの?」
僕の質問に、照が腕を組んで答える。
「う~ん……一瞬だけ現実を忘れたい」
「中年サラリーマンかよワロス」
「キレそう」
物理的に遠くへ行きたいわけじゃないらしい、という情報を手に入れた。これは大きな進歩だ。
――だったら、話は早い。
「ここじゃない別の世界、行ってみる?」
僕の提案に、照が小首を傾げた。おっと、予想以上に可愛いぞ。というのは顔に出さず、僕はソファから立ち上がる。
リビングにあるゲーム機の群れから、一つの機械を手に取った。
「てれれてってれ~ん。ぶいあ~る~」
「なんてテンションの低いネコ型ロボット」
頭からはめるとアラ不思議。まるでゲームの世界にトリップしたかのような感覚を味わえる、最新のゲーム機。声高々に宣言するのは僕のキャラじゃないので、テンションはいつもと同じで許してもらおう。
僕はテレビとゲーム機の電源を付けて、照を手招きする。照は渋々といった様子でテレビの前に来て、僕から機械を受け取った。
「俺、ゲーム得意じゃないんだけど……」
「初心者でも簡単にできるゲームだから、大丈夫大丈夫」
「……ちなみに、どんなゲーム?」
「ただ上空からスカイダイビングするだけのゲーム」
「目的、とは」
不満そうだけれど、照が頭から機械を取り付ける。
――瞬間、照のテンションがグッと上がった。
「うわッ! ヤバイ、出雲ヤバイ!」
「僕はヤバくないけど」
「飛べそう!」
「落ちるだけだよ」
コントローラーで操作をしてから、照に手渡す。照は興奮した様子で、機械によって映し出されている仮想世界を楽しんでいる様子だ。
そんな照の様子を隣で見ながら、僕は思わず笑みを零す。
……僕の財力じゃ、まだ照を遠くへは連れていけない。そんなの、分かってる。
だから……今の僕にできる方法は、これだけ。
――これは、ミッションクリアになるのかな……?
――なんて。ばかばかしい。
「出雲、出雲! 落ちてる! 俺! 足は床なのに落ちてる!」
楽しそうに笑う照の声が、最高の報酬なんだから……ミッションクリアに決まってる。
――それはまだ、落雷によって僕達の関係が変わる……少し前の話。
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