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【その刃を突き刺して ① 心と身体を捧げた次は】

◆小説用お題ったー。様より ~お題【心と身体を捧げた次は】~ 【キャラ紹介】 *織辺(おりべ) 社会人。愛しているけれど、どう接するのが正解なのか分からないのでとりあえず痛めつけるタイプのヤンデレ。宮代のことは心から愛している、らしい。 *宮代(みやしろ) 大学生。体に残る生傷と傷痕こそが愛の証だと信じて疑わないタイプのヤンデレ。織辺のことは心から愛しているなんて言葉じゃ言い表せないほど愛している、らしい。  宮代(みやしろ)織辺(おりべ)に対する気持ちを一言で表すのなら、きっとこうだろう。  ――【絶対服従】。 「織辺さん、好きです……好き、大好き……っ」  散々殴られ、端が切れた口を動かし、宮代は愛を囁く。頬は腫れ、髪は酷く乱れていた。  対する織辺は、宮代をサンドバック代わりにしたことで日頃の憂さ晴らしが済んだのか、すこぶる上機嫌だ。床に倒れながら、息も絶え絶えに好意を口にする宮代を、織辺はソファに座り、目を細めながら見下ろす。 「好き、大好きです……大、好き……っ」 「あぁ、俺も好きだ」 「嬉、しい、嬉しいです……っ」  うわ言のように呟く宮代は、織辺を見てはいなかった。ぼんやりと床を見つめ、ただ思ったこと、感じたことを呟くだけの人形に成り果てている。  上機嫌な織辺は煙草に火を点け、床に倒れる宮代に言葉を投げかけた。 「俺は今、機嫌がいい。してほしいことがあるなら叶えてやる」 「……して、ほしい、こと……」  宮代の瞳が、織辺を映す。ユラユラと揺れる煙を見て、宮代は口角を上げた。 「――その火を、押し付けて……ほしい、です……」  予想外のような、予想通りのような言葉に……織辺はげんなりとした表情を浮かべる。 「お前なぁ……俺のこと、鬼か何かだと思ってんのか?」 「っ! そ、そんな、わけ……っ!」  痛む体を起こそうとする宮代に、織辺はソファから下りて近寄った。  ――そして。 「そんなの、わざわざ頼まなくたって決定事項だろ、ばーか」 「――アァッ!」  袖を捲り、織辺は煙草の火を宮代の腕に押し付ける。当然、宮代は苦悶の表情を浮かべ、悲鳴をあげた。  肉の焦げる、不快な臭いが二人の鼻をつく。  ――それでも、二人は幸福だった。 「だから、それ以外」 「はっ、あ……ぅ」 「待たされるのは好きじゃねぇ。サッサと決めろ」  宮代は額に汗を浮かべながら、別の願いを思案する。  傍でしゃがみ込んでいる織辺を見上げて、宮代は焼けた腕を何とか動かし、手を伸ばす。 「織辺、さん……っ」  伸ばされた白い手を、織辺は握る。そんな、普通の恋人みたいな行為を許してくれるだけで……宮代は他に、何も要らない。  ――けれど、人間はとめどなく欲が出る生き物た。 「心も、身体も……オレの全ては、織辺さんの物……です、よね……っ?」 「愚問だな」 「でもオレは、捧げ足りない……です」  織辺の手を握り返し、宮代は泣き出しそうな表情を浮かべる。 「次は、なにを……オレは何を、捧げたら……織辺さんは、喜んで……くれます、か……っ?」  普通の感性を失い、片目を失明し、文字通り身も心も織辺に捧げた宮代は……それでもまだ、織辺への愛を証明したかった。  ――こんなものじゃない。  ――自分はもっと、織辺に尽くすことができる。  それを証明する方法を、宮代は織辺自身に求めたのだ。 「それを、教えて……ほしい、です……っ」  不意に、織辺が宮代を抱き上げた。当然、宮代は困惑する。  宮代が顔を上げると、不敵に笑う織辺と目が合った。 「知るかよ。自分で考えろ」 「え――ぁ、んっ」  深く口付けられ、宮代は動揺する。  けれど、抵抗はしない。  乱暴に口腔を蹂躙する織辺の舌を、甘んじて受け入れる。支配されていく感覚に、宮代は体を震わせた。 「は、ぁ……お、りべ……さん、っ」 「酷くされるのと、優しくされるの……どっちがいい?」  ソファに沈められ、傷だらけの首に織辺の指が這う。そこで宮代は、ぼんやりと考えた。  ――あぁ……まだ、捧げられるものがあるじゃないか、と。  口角を上げ、宮代はか細い声で囁く。 「痛く、酷くして……ください。折って、壊して、いっそ――」  ――『処分して』。  その言葉を紡ぐことは叶わず……宮代の首には織辺の指が深く、食い込んだ。

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