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【半歩ずつ踏み込もう ② 自撮り】

◆ファンアート嬉しかった記念 【キャラ紹介】 *相田(あいだ)雨太郎(あめたろう)  圧倒的優等生系高校生。マニュアル人間。  同級生の傘野に告白されてから、携帯小説というジャンルの本で恋愛を勉強中。  ……だが、文体があまり好きではないらしい。 *傘野(かさの)(らい)  感情論でしか物事を話せない系高校生。思っていることは割と顔に出る。  無表情な相田が本を読んでいるとときたま眉間に皺を寄せている姿に、なぜだかキュンとくるらしい。  前略。  母さん、そして父さん。  息子の雷は、今日……死ぬかもしれません。  拝啓。  ……敬具、だっけ? 「傘野、見切れている」 「ごめんなさい! 現代文の勉強頑張ります!」 「現代文の話はしていない。……もう少し寄ってくれないか」  肩が、グイッと引き寄せられる。 「ヒェ……ッ」 「あぁ、これなら問題ない」 「ヨカッタデスネ……」  ――なんで、どうして、こんなことに……?  事の発端は、数秒前だ。 『――傘野、写真を撮らないか』 『えっ』  回想終了。その前後はよく憶えてない。  時間は放課後、場所は教室。オレと相田二人だけ。  この状況だけでオレは結構ダメなのに、そのうえ、こ、こんな……ッ! 「知っているか、傘野。小顔効果というものを」 「えっと、えっ」 「複数人で写真を撮る際、皆よりも顔を少し引くと、小顔に見えるらしい」  ウソだろ。相田が『小顔効果』って言ってる。  予想外の相手から写真を撮ろうと誘われて、予想外の単語を聞かされて……結構ダメになってるオレは、かなりヤバイかもしれない。  ……いやいや! 考えることを放棄するな! これは相田をドキッとさせる絶好のチャ――。 「どうした。顔を引かないのか」 「えっ」  ウソだろ。小顔効果……オレに譲るのか?  ……うっ、くそぅ……! メチャクチャ、ドキッとした。  悔しい。悔しいから、少しだけ顔を引いてやる……!  隣で、相田が無愛想のまま頷いてる。  ……カッコいい。  それがまた悔しくて、オレは唇を引き結んだ。 「参考資料では、腕を寄せて珍妙なポージングを取っていた。それにどのような効果があるのかは分からないが、試してほしい」 「こ、こう?」 「自分が見た参考資料とは相違がある。けれど、君らしくていい」  ……オレらしいって、なんだろう?  とりあえず腕を曲げて、そのまま腕同士をくっつけてみる。コレが、オレらしい、らしい。  それにしても……オレと相田が、写真。  夢みたいな状況に、理解が追い付かない。  もしかしてコレ……オレが見てる、都合のいい夢なんじゃないか?  いや、絶対そうだ。  じゃなきゃ、相田がこんなこと言うはず――。 「傘野、撮るぞ」  肩に置かれた相田の手が、力強くなる。  …………この感触は……夢じゃ、ない! 「……ッ」  ダメだダメだ、ちょっ、え、相田待って待って! 今撮るな! 顔が絶対赤いから、あか、赤いからーッ!  と、オレが思ったところで相田には聞こえない。  ――カシャッ、と。  そんな、相田には似合わない音がスマホから響くと同時に。  ……相田の手が、肩から離れる。 「傘野、この写真が欲しいか」 「え! え、えっと、う、うんっ」 「なら、連絡先を提示してほしい」 「あ、わ、分かった!」  慌ててスマホを取り出し、メッセージアプリを起動したオレは、自分の連絡先を画面に表示した。  画面を見て、相田がオレの連絡先を登録する。  そして数秒後、さっき撮ったばっかりの写真が送られてきた。  ……あっ、ヤッパリオレの顔、赤い。恥ずい。 「あ、相田が、自撮りに興味あるなんて……い、意外だな!」  写真を眺めながらそんなことを言ってみると、相田からは淡々とした声が返ってきた。 「いや、今回の目的は写真を撮ることではない」 「は?」  顔を上げて、相田を見上げる。  メガネを指で押し上げて、相田もオレを見た。 「――写真は口実。スムーズに連絡先を訊きだすことが目的だ。なるほど……ネットの情報というものも、時には役立つ」  それだけ言い、相田は自分の席に戻ってサッサとカバンを手に取る。 「また明日」  簡単な挨拶だけ残して、相田が教室から出て行った。  オレは一人……スマホに映るオレと相田を見る。  ……そして。 「――心臓に悪いからッ、普通に訊けよバカーッ!」  と叫んでみるも、たぶん相田には聞こえてないだろう。  これは、オレたちが過ごした一瞬の……放課後物語だった。 【半歩ずつ踏み込もうオマケSS:自撮り】 了

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