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【半歩ずつ踏み込もう ④ 相手を騙さないと出られない部屋(中編)】
◆突発的に思いついたネタです
――カリフラワーは。
――ブロッコリーの雌個体。
――では、当然ない。
ザックリと説明すると、カリフラワーはブロッコリーの【亜種】のようなもの。
突然変異と品種改良の果てに辿り着いた、似て非なる存在。
ゆえに、雌雄の違いによって色や名前が変わったわけではない。
……それなのに。
「「……は?」」
二人は、顔を見合わせて動揺していた。
(な、なんだよ、相田……! なんでそんな顔してるんだよ! そんなの常識だろ? メロンだってスイカの女の子バージョンだろ? なのに、なんでそんなキョトンとした顔してるんだよ、相田ッ!)
まるで嘘を言うかのように、常識を提唱された傘野と。
(なぜ、そんなにも無垢な目をして自分を見ている……? 自分は今、君に嘘を吐いたはずなのに……なぜ、自分の想定と違う反応を示しているのだ?)
嘘を提唱したはずなのに、真実として捉えられた相田という。
……あまりにも、奇妙な構図。
そこで、傘野は気付く。
(――もしかして、相田はオレがカリフラワーの正体を知らないと思ってたのか……? ……そっか! だから、ウソを吐くフリをして本当のことを教えてくれたんだ!)
圧倒的解釈違い。
けれど、傘野が若干うっすらほんのりと頬を赤くするのには、十分すぎる勘違いだった。
(や、優しすぎるだろ……! こんな、相田からしたら悪意しか感じない部屋とお題なのに、逆転の発想でオレの知識をアップさせようとしてくれるなんて……! うぅぅ、好きだぁ……ッ! このドキドキがオレの【好き】って気持ちの根拠なのに、なんで相田に伝わらないんだよぉお……ッ!)
ときめき街道まっしぐら。
傘野が勘違いを加速している最中。
ついに、相田も気付いた。
(――まさか傘野は、自分の嘘をさも真実のように振る舞うことで、自分のことを騙そうと――【相田雨太郎が持つ価値観の根底】を騙そうとしているのか……?)
圧倒的解釈違い、セカンド。
相田は傘野を騙すために、ただ【嘘を吐く】という方法しか思いつかなかった。
しかし、傘野は違う。傘野は、表情や態度……自分が持てる全てのものを使って、相田を騙そうとしたのだ。
(傘野……。君は、自分が思っていたよりも聡い男だったのか……)
勿論、それらは全て勘違い。
傘野にそんな芸当、できるはずがなかった。
こうして、二人の勘違いが絶妙に交わった瞬間。
――今度は傘野が、アクションを起こした。
「な、な~んちゃって! いや~、さすが相田だな! オレ、そんなこと知らなかった~! ヤッパリ、相田って頭いいんだな!」
漠然と、傘野は考える。
(コレ、オレが騙されたフリをしたらいいんだよな? そしたら、オレたちのこと監視してる奴がドアを開けてくれるかもしんないんだよな? ……よし! オレ、騙された演技頑張るからな、相田!)
傘野にしては珍しく、頭を働かせた方だろう。なかなかに、ずる賢い。
――だが。
(――なぜ突然、そんな芝居を始める……っ)
相田は強く、傘野の【演技】に猜疑心を抱いた。
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