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第4話
「うっ、ああ、」
少し強めに握り、親指と人差し指で作った輪っかを上下させながらカリを刺激すると、すぐに達してしまった。ずっと我慢していて限界だったのだろう、あまりにも早い射精で、それにまた男性がボロボロと泣き出した。顔を見られたくないのか俺の胸に埋めているせいで、服が涙でじんわり濡れていく。
苦笑しながらも、気持ちは理解できるし俺も悪いことをしたから、罪悪感から頭を撫でた。
「うっ……」
「なんか俺の方が痴漢より確実に変態なことしてるな。ごめんね」
外からは電車が到着する音がしたけれど、終わったばかりで急かすこともできないしで乗ることを諦めた。男性は相変わらず泣いているし、これ以上追いつめるよりも自分が一限目の授業をサボる方がよっぽどいい。彼の仕事はどうかは分からないけど、落ち着くまで傍にいてあげたいと思った。
「電車、二十分ごとには来るみたいですし、次のに乗りましょう。それまで……って、」
手の中に吐き出されたそれと、男性の体を拭いた方がいいからと一旦座らせると、出したはずなのにまた少しだけ起きあがっていた。
本人もやっと解放されたと思ったはずなのに、体は言うことを聞いてくれないなんて……。出されたものも濃かったからしばらく抜いていなかったのだろう。久しぶりにそういうことしたせいで単純に反応してしまったのだろうか。
「……これ、また俺が触ってもいい?」
「っ、」
「ねぇ、もうさ、痴漢されて勃ったちんこの処理って考えるのやめようか。それだからあんたもモヤモヤしてるわけだし。痴漢されたことは忘れられないだろうけれど、今は単純
に俺と気持ちいいことするためにトイレの個室に入った、だから今から二人で気持ちいいことをする、ってことにしようよ」
肩に掛けていた鞄を背中に回すのをやめ、トイレの荷物掛けに置いた。座っている男性の手を引き立たせると、くるりと反対を向かせて背中から包み込むように抱きしめる。それからもう一度熱を持ったそれを握った。
指を上下させ刺激を加える。カリから亀頭に沿って作った輪を狭め、頭頂は手のひらですっぽりと包んだ。それを繰り返すと完全に勃ち上がり、気持ちいいのか男性の腰が動く。
「ねぇ、名前は何て言うの?」
「む、ぎし、ま……っ、」
何となく聞いたその質問に、迷うことなく男性が答える。こういうことをされているのに、その相手に教えてしまうのだからどれほどいっぱいいっぱいなのかがよく分かる。
「むぎ、しま……? 聞いたことないなぁ。でも可愛いね。麦ちゃんか……」
「っはぁ、」
「気持ちいいこと、楽しいこと。今はそれ以外何も考えないで。恥ずかしいことじゃあないよ、だって俺が触ってるんだから。勃つのも当たり前だよ」
どういう人なのか興味が湧いてきた。この人にとって俺との出会いは最悪ですぐにでも忘れてしまいたいものだろうけれど、俺は俺でこうして知らない男性のを扱いているのだから、よくよく考えれば俺も忘れてしまいたいものであるはずなのに。
……これっきりというのは惜しい気がする。こんな出会い方、これからの人生で二度とないはず。運命という言葉はあまり好きではないけれど、このまま全く知らない他人に戻るのはやっぱりもったいない。
「俺の名前は、楠瀬。楠瀬佳吾」
「っあ、」
「覚えたくなくても覚えてくださいね」
一定のリズムで触っていたのに一気に緩急をつけると、びくりと肩が震え、俺の腕をしがみつくように握っていた手に力が入った。
「気持ちいい?」
「も、出るっ、出るっ」
「いいよ。このまま出しちゃってください」
今度は手で受け止めることなく、そのまま便器の方へと先を向けた。きれいに入ってはいかず、ぱたぱたと便座に飛び散る。今度こそ落ち着いたそれに俺も安堵した。すぐさまトイレットペーパーで飛び散ったそれを拭き取り綺麗にすると、ぐったりとした男性を座らせた。それから男性の体も拭き、服を着直す間は体を支えてあげた。
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