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第12話

怒鳴るようにしてバカみたいに勝手なことを言えば、俺のために開けてくれたであろうビール缶を麦嶋さんが床に落とした。カーペットへと大きく染みを作るそれを拾うこともなく、麦嶋さんの腕を掴むと寝室まで引きずった。抵抗はするものの、相変わらず力が弱い。 「佳吾くん……!」 ベッドに投げ飛ばし、覆うようにして彼の上へ跨がる。左手で彼の両手首を固定し、右手は服の中へ突っ込んだ。痴漢をする人の心理は分からないけれど、こうして触れようとしている俺は痴漢をする人と同じなのかもしれない。いいや、あの時よりももっと酷い。 「俺が今からあんたにすることを考えれば、この間の痴漢なんて可愛いもんだよ」 「……っ、」 「もう誰も助けてくれないよ。俺のこと簡単に信用して、優しいだなんて言って、それで家まで上げたあんたが悪いんだ」 麦嶋さんが可愛くて、放っておけなくて、優しくしたのも、懐いてほしいと思ったのも自分なのに。それが結果として自分も麦嶋さんをも苦しめている。何が運命だ。何がこのまま全く知らない他人に戻るのは惜しいだ。心変わりして余計なことを考えるんじゃあなかった。 「あんたに触れたくてたまらない。滅茶苦茶にしてやりたい」 どうせ自覚してしまったのなら、友人は続けられない。この衝動の抑え方も分からない。出会った時は非日常的だっただけで、今はこの人を自分のものにしなければ触れられないのなら、叶うことのないそれを願うよりも一度だけ、この手でぐちゃぐちゃにしてさよならした方がマシだ。麦嶋さんのことを想うのなら今すぐにやめて、許されなくても謝るべき行為で、けれどもう、この想いは引き返せないところまで来てしまっているらしい。俺の理性は俺を止めてくれない。 「嫌だ……、佳吾くん、頼むよ、」 ボロボロと涙を流しながら、力なく麦嶋さんが声を漏らす。 「そう言ってるけれど、あんたのちんこ反応してるじゃん。前に俺に触れられた時のこと、思い出した? あの時気持ち良さそうだったもんね」 「……やめ、」 「俺の手、覚えてる? 直接触ってほしいでしょ?」 変わらずに左手で彼の手を固定したまま、右手でズボンを下げた。パンツをズラし、久しぶりに見た彼のペニスにあの時のように触れた。 「んっ、嫌だ、嫌、ぁ……っ」 感じている声は出してくれるのに、「嫌だ」をやめてくれない。力ない抵抗を見せながら何度もその言葉を口にする。あの時だって無理矢理してもそんなことは言わなかったのに。 「嫌じゃあないでしょ? ちゃんと勃ってるじゃん」 「嫌だ、嫌っ」 その言葉を聞きたくないと強引に口付けると、麦嶋さんの体の震えが大きくなった。奥へと逃げる彼の舌を追いつめて苛めれば、完全に抵抗する力を失ったのか動かなくなった。小さな口は俺の舌と唾液でいっぱいになり、それにむせて咳き込むも、酸素を吸うことを許さないとでも言うようにまたその口を塞ぐ。

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