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第13話

涙やら唾液やら鼻水やらでぐちゃぐちゃになった麦嶋さんに、隠せない程の痛みが心に刺さるけれど、それでも止めることはできなくて。ただ、こうまでして感情を押しつけたところで俺の気持ちが無くなるわけでも何か良い方向に変わるわけでもないと自覚した冷静さが、虚しさを大きくする。 「麦嶋さん……」 「ひぅ、」 「俺、何やってるんだろうね」 「あ、嫌だ……いや、」 ズボンを窮屈にしている自身に笑いながら、それを麦嶋さんのに押しつけた。 「今からコレが、あんたの中に入るの」 「……っ、嫌だ」 「優しくなんかしてあげない」 太腿までズボンを下ろし、硬くなったそれを麦嶋さんの後孔にピタリと合わせた。既に一度吐き出された彼の白濁でぬるりとしたそこを、上下に動かして刺激する。 「ヒクヒクしてるけど、誘ってるの?」 首を振って嫌だと言う麦嶋さんのそこに、先の方だけ挿入させた。 「……っ、」 「キツいね。これ以上入れたら、裂けて血が出るだろうなぁ」 「嫌だ、ね、佳吾くん……、やめ、てよ」 「もう無理」 うるさいから黙らせようと、再び口付けると、今度は逃げることなく、麦嶋さんは俺の唇に噛みついた。痛みを感じた時には口内に血の味が広がっていて、それに気を取られているうちに麦嶋さんは腕の中からいなくなった。 「……ってぇ、」 押さえた手の甲にべたりとついた自分の血に、麦嶋さんの気持ちを見たようだった。顔を上げて睨み付ければ、ベッドの端へと逃げた麦嶋さんが俺に向かって枕を投げる。顔に思いっきり当たって落ちたその枕を掴み、やるせない気持ちから床に投げ捨てようとした時、今度は物ではなく、麦嶋さんが俺に飛びついてきた。馬乗りになり、相変わらずボロボロと泣きながら、さっき自分が噛んで傷を作った俺の唇を指でなぞった。 「ちゃんと言ってよ……」 「……な、んで、」 「友人になろうって言ったのは君じゃあないか。俺がそれ以上を望んだところで、君から始めてくれたこの関係を壊せる程の勇気はないよ……。だから、佳吾くんがそれ以上を望んでくれるのなら、こんなことをしないで、言葉できちんと伝えてよ」 「麦嶋さん……?」 「初めこそは強引で生意気で嫌な子だと思っていたけれど、本当は優しくて、一緒にいる時間は楽しいし、大学の友人だってたくさんいるだろうにそれでもずっと俺のことを構ってくれるから、気まぐれで友人になろうと提案してきたわけじゃあないんだって、特別な友人ができたんだって嬉しくて。でも、少しずつ過ごす時間が増えていくうちに、次はもっと長く一緒にいたいっておかしな感情を持つようになるし、楽しいと苦しいで──」 「麦嶋さん……!」

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