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第14話

何を言っているか分かってるの? とそう聞けば、唇を噛みしめ大きく頷き、俺の胸へと顔を埋めた。 「俺に触れられる理由を、君にあげるから。だから、君も、君に触れてもいい理由を、俺にちょうだいよ……。伸ばされた手を掴んで離されるのは嫌だ。少し肩が触れるくらいじゃあ足りない……。俺だって君と友人はもう無理だ」 「……っ、」 「佳吾くん、好きです……」   真っ直ぐな瞳に見つめられ、瞬きも忘れ無言で見つめ返せば何も言わない俺に麦嶋さんは不安そうな表情を浮かべた。ハの字になった眉に震えながらも結ばれた唇を見て、本気でそう言ってもらえたのだと理解した俺は、麦嶋さんの背中へとキツく腕を回した。 「俺に理由をくれるの? 俺も、あげていいの? もらって……くれるの?」 「あげたいし、もらいたい……。く、ださい……」 それを誕生日プレゼントにしたいなぁと、ぼそりと呟いた麦嶋さんに俺の中で爆発した感情がこみ上げ、噛みつくように口付けた。麦嶋さんは一瞬びくりとしたもののすんなりと口を開け、逃げずに受け入れてくれると、俺の胸元を恐る恐る掴んだ。  くちゅくちゅと唾液が絡まる音で興奮が増し、漏れる麦嶋さんの吐息さえも食べてしまいたいと呼吸の仕方も分からなくなるような激しいキスを繰り返す。気持ちよさで力が抜けてきた麦嶋さんのパジャマを脱がそうとボタンに指をかけるも、早く触れたいとの想いが空回り、ボタンを外す時間さえも惜しい。そのまま服の隙間へと指を入れ、思いっきり下へと手を下ろした。 ぶちりと嫌な音がし、手には痛みが走る。それにハッと意識を戻され視線を動かすと、かっちりと閉められていたボタンが半分なくなり、糸が伸びていた。 「だめだ。麦嶋さん、俺、今日は優しくできない。怖い思いをさせたばかりで、今も、今からもまた怖がらせることになるのは嫌だ。あんたとの初めてはもっと優しくしてあげたい……。ごめん、ちょっと頭冷やしてくる」 抱きしめていた手を離し、顔を手で覆いそう言えば、麦嶋さんは俺の気持ちは無視で、硬くなった自身を押しつけてきた。潤んだ瞳で額には汗を滲ませ、恥ずかしくてたまらないという顔をしているけれど、それでもはっきり「行かないで」とその言葉を発する。 「そんなこと言ったって、俺も勃ってしまったから……責任取ってよ……。優しくしなくてもいいよ。その代わり、たくさん好きだって言ってくれればそれで……」 「だから何でまたそんなことを……!」 「あっ、佳吾くんのもっと硬くなった……」 「あぁもう無理、ほんっと無理」 自分の全てが、今の俺にどれだけ影響を与えているのか分かっているのだろうか。こんな麦嶋さんを見てどうやって理性を保てと言うのだろう。 「どうなっても知らないからな」 「欲しかったものをもらえたからいいんだ。それと……」 “君の弱みは、俺への愛情ってことにしてもいいかな” そう言葉を続け、顔をくしゃくしゃにして幸せそうに笑う麦嶋さんに俺は、何の否定もできずにただただ胸の中から溢れ出る感情をぶつけるように触れた。 「麦嶋さん……」 「ん?」 触れられる理由。与えられた者と与えた者だけが共有できるもの。それはとても特別なことだと噛みしめ、より一層重みの増した言葉を告げた。 「好きです」 END

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