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憑かれ男子 03

 恐らくは階段の最上段から、この踊り場に転落したんだろう。聞いてみると案の定、こくりと小さく頷いた。 「そ、か」  なんでだろ。それを知ったからなのか、切なさが込み上げて来る。他にも転落した原因や俺に伝えたいことも聞きたかったが、イエスとノーの首の動きだけでそれを知ることは難しい。  こんな時はスマホで検索に限る。検索画面を表示させ、大学名と事故があった時期、事故死等のワードで検索にかけてみる。 「あ、あった。もしかしてこれ?」  表示された記事の中からそれらしき記事を元イケメンに見せたら、それそれとでも言うように、何度も何度も頷いてみせた。  大手新聞の記事によると、死亡したのは二年生の男子学生とあり、名前は記載されていない。もう少し探すと、彼と同級生らしき人物の個人ブログに彼の氏名が載っていた。 「清水(しみず)(れい)?」  名前を口にすると元イケメンは大きく頷いた。  ブログ記事によると、元イケメン……もとい。清水先輩が事故で亡くなったのは去年の夏のことで、先輩は男女ともによくモテる人気者だったようだ。添付されていた画像は顔色も良く、生前はかなりの美形だったことが窺える。 「先輩、かなりのイケメンだったんですね。えーと……」  その記事から転落した原因を探ってみたが、やっぱりそれはわからなかった。ただ、先輩の親友らしき同級生が酷く落ち込んでいたようで、その記事を横から読んだのか、先輩の顔が悲しげに歪んでいる。  もしかして、心残りってこの人のことかも。先輩に特定の彼女がいたって記載はないし、家族のことも当然心残りだろうけど、それを俺に持ち掛けてくるとは考えづらい。  もっと詳しく知りたかったけど、やっぱりイエスとノーじゃ限界がある。仕方がないからその件はそのままに、その日の放課後に改めて先輩と向き合ったのだった。  俺が暮らしているのは築30年を越えるボロアパートで、俺の部屋には三人の幽霊が取り憑いている。一人は30過ぎの妻子あるおっさんで、今でも妻子と暮らした部屋に未練があるらしい。  この部屋でおっさんが自殺したのはもう20年も前のことで、奥さんと子供はとっくに引っ越して、その行方はようとして知れない。因みにおっさんのお陰で俺の部屋は事故物件として扱われ、格安の家賃で借りられている。    その原因がおっさんであることがわかったから、この部屋に決めた経緯(いきさつ)がある。悪霊の(たぐい)が居座っているならごめんだが、このおっさんなら人畜無害だ。  あとの二人はギャル系の女子高生と小汚い浪人生の男で、三人一緒の時もあれば、それぞれが別々に現れることもあった。

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