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第2章 オーディン 【1】 私はあの者を皇子妃とする
シアーズ皇国は建国以来 隣国と戦争を繰り返しながら先進国として最先端の科学・武器を有し勝利し、占領後は属国として支配しながら統治は各国王族に任せるという形態で領土を広げてきた。
その皇帝国の第一皇子として産まれ、未来の皇帝にふさわしい教育を受け学業も飛び級して14歳で既に大学院過程まで進んでいた。
早くから政治にも参加し外交の駆け引きなどは父皇帝や大臣たちも舌を巻くほどだった。
【初代王の生まれ変わり】と人々は褒めはやしたが、ふざけたことを言うな。
遠からぬ未来 私は初代オーディン皇帝として即位しこの国を全世界の頂点へと導くのだから―――
生まれながらに【神々の祝福】と称されるほどの美貌と優秀な頭脳、私の人生 恐るるものはなかった。
シアーズ属国の直系王族は、シアーズに対しての忠誠心の証として5年間の留学が義務付けられている。
人質としての意味合いもある。
この日も大臣会議の後、謁見の間で各国からの王族留学生を迎え入れていた。
様々な年代の各国王族が一人づつ謁見の間に入ってきては挨拶をし退出していく。
その者が入ってきた瞬間、この世の音がなくなった。
光の加減で淡いブルーに見える艷やかな長いプラチナブロンドが広間に差し込む天窓からの光にきらめいている。
真珠のごとき白い肌、小さな顔に大きな目のライラック色の瞳が儚げに潤んで玉座を見上げる。
エーリス独自の白銀に輝く王族の衣装が、その者を一層美しく夢幻の住人であるかのように引き立てていた。
天上の鈴の音のごとき心地よい声音が、ようやく音が戻ってきた我が耳をくすぐる。
―――私が求めてやまなかった理想が存在したことに歓喜した―――
謁見が終わるやいなや、父皇帝や居並ぶ大臣たちを前に宣言した。
【私はあの者を皇子妃とする】―――と
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