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それから、何日この部屋で過ごしたかわからない。 一通り生活に必要な家具家電は揃っていたが、唯一時計だけが用意されていなかった。 恋人同士という間柄である以上、再会してから幾度かそういう雰囲気になる事はあったが海は何かと理由をつけて春樹との行為を避けてきた。 だが、流石にいつまでも誤魔化しきれないとも思い始めていた。 「海、俺たちこのままいつまでも一緒に居られるよな?あっでもタロウが…」 この部屋に来たのは春樹だけで、タロウがどうしているのか心配ではあった。 「はるくん、俺ね」 俯き服の裾を握り締めた海が、か細く声を絞り出す。 不安な時、いつも出る癖だ。 「どうした?」 春樹はそっと海の肩を抱き寄せて、柔らかい髪をかき混ぜる。 その身体は、弱々しく震えていた。 「ううん、ごめん。少しベッドで休むね」 小さく頭を振って、乱暴に袖で目元を拭った海は立ち上がろうとした。 だが、春樹がその腕を掴んで引き止める。 「おい海、俺はあの時もっと話を聞いてやれば良かったってずっと後悔しているんだ。」 掴んだ腕を引き寄せられて、春樹の腕の中に閉じ込められる。 海は、遂に堪えきれなくなってしゃくりあげた。 「ごめんね、いつも勝手で。」 溢れては止まない涙が春樹の服を濡らしていく。 その姿は、さながら大きな子供のようだった。 「責めたいんじゃないんだ。言いたいことがあるなら、なんでも聞くから些細なことでも言ってほしい。」 泣きじゃくる背中を摩りながら語りかける。 しばらくして、漸く落ち着きを取り戻した海が口を開いた。 「はるくんがここから帰る方法、来た時から知ってたんだ。でも…また一緒に居られるって思ったらどうしても言えなくて。」 海は、春樹が部屋から出るための条件を話した。 瞳から涙が零れ落ちるたびに春樹が優しく拭い、海の膝に置かれた手に自分の手を重ねて握り締める。 「話してくれてありがとうな。」 春樹は、海の涙に濡れた瞼にくちづける。 「シャワー浴びてくるね。」 そう言って、全てを話し終えた海は深呼吸をして立ち上がると浴室に消えていった。

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