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18※フィストファック
これから自分が何をさせられるのか分からない。けれど、俺のベルトを掴んだ阿賀松に「邪魔くせえな、これ」と下に履いていたものを全て脱がされ、軽く腰を浮かせるように掴まれた時点で嫌でも気付かされる。
「っ、はー……っ、ぅ゛、ひ……」
どこからか取り出した注射器のような形のそれを手にした阿賀松は「暴れんなよ」と囁くように
そのままケツの穴に触れた。そのままねじ込まれる親指にぐに、と大きく口をこじ開けられたかと思えば、もう片方に持っていたその注入器の先端部をそのまま埋め込んでくるのだ。
いきなり挿入される異物に驚く暇もなく、阿賀松の手により体内にどろりとした液体を流し込まれる。
「……っ、ん、ぅ……っ!」
てっきり潤滑剤もなく挿入されるのではないかと思っていただけに、寧ろ普段よりも優しい阿賀松に戸惑うのも束の間。注入器の中に入っていたローションを全て流し込んだ阿賀松はそのまま空になった注入器をベッドの上に捨てる。
そして、そのままローションを滲ませていた肛門へと更に指をねじ込んだ。
「っ、は、んん……っ!」
「痛くはねえだろ。ちゃんとしっかり慣らしてやるから安心しろ」
「ふ、ぅ……っ!」
どういうつもりなのかと真意を確かめるよりも先に、指の付け根までねじ込まれる指先に全身が震える。細くはない硬い阿賀松の指は、そのまま中に溜まっていたローションをたっぷりと絡め、内壁へ塗り込んでいくのだ。
グチャグチャと粘ついた音が腹で重なって響き渡り、声を抑えようにもこの音までは殺すことは不可能だった。
最初は隈なく塗りこまれていたローション。尻の穴が濡れるような違和感こそはあったものの、ローションの助けもあってか二本目の阿賀松の指を挿入されても普段のように痛みを感じることなかった。
本当にどういうつもりだ、と身構えた矢先だった。全身に違和感が起き始めたのは。
「――ッ、ぅ……く……っ」
粘膜が――ローションを丹念に塗りこまれた内壁が焼けただれるように熱を持ち始める。
心臓から夥しいほどの血液が押し出され、下腹部に集中していく。ドクンドクンと大きく脈打つ鼓動が耳の裏で聞こえてくるようだった。
「っ、は、……ッ、う゛……」
「気持ちいいだろ? それ」
「おい、齋藤に何を――」
「何って、ローションだよ。ただ、ちょーっと気持ちよくなる成分入ってるやつだけど」
「お前……ッ!」
「しま、ら、ぃ……じょ、うぶ、だから……」
「っ、齋藤……」
痛みよりはましだ。そう言い聞かせる。
先程よりも更に鋭くなる感覚。阿賀松の指の節々が粘膜を掠めるだけで全身が緊張した。
とにかく、志摩を安心させなければ。そう思うのに。
「いつまで余所見してんだ? ユウキ君」
「っ、ぐ、ひ……ッ!」
「お前はこっちに集中しろ」
空いた手で肛門を大きくこじ開けられたかと思えば、そのまま容赦なくねじ込まれる指に堪らず息を飲んだ。
四本の指が腹の中、媚薬入りのローションを練り込むように執拗に撫で回す。中で擦れ合う指の感触に、意識が飛びそうになった。
「ふー……っ、ぅ゛、う、ひ……ッ! ぐ、」
「痛くねえだろ、ほら」
「っ、ぁ゛ッ、んぎ、ひ……ッ! う゛、きゅ……っ!」
焼ける、熱い。苦しい。
乱暴に前立腺を押し上げられた瞬間、眼球の裏が真っ赤に点滅する。声を我慢することも忘れ、咥内に溜まった唾液が溢れた。それを阿賀松は笑いながら舐め、そしてさらに追い打ちを掛けるように指を動かすのだ。
「……っ、は、相変わらずよえーなぁ。ここ」
「は、ふ……っ、ひ、ぅ」
「オラ、何勝手に休んでんだ」
「ん、ぅ゛、ひ……ッ! ぁ゛、ぅ゛……ッ、く、ひ……ッ!!」
なんだ、なんだこれは。
今まで感じたことのないあまりにも暴力的な快感に全身が打ち震える。必死に逃げようとする腰を掴まれたと思えば、そのまま阿賀松は自分へと寄せるように俺の腰を抱きかかえるのだ。
足を閉じることすらも許されず、阿賀松の眼下、脚を開いたまま激しく中を攻めたてられる。小刻みに痙攣する下腹部、自分の視界の端で性器が震えるのが入った。
「……ッ! ふ、ゃ゛、まッ、待っ、くだ、さ、ぁ゛……っあ、ぁ゛……ッ!」
チカチカと照明が明滅する。違う、おかしいのは俺の目と頭だ。
耳のすぐ側でグチャグチャと粘着質な音が聞こえたかと思えば、今度は鼓動が混ざり、我慢なんてする暇もなく俺は呆気なく阿賀松の指によってイカされる。
びくんと震えた性器から、ぴゅっと勢いよく溢れた薄いそれが自分の腹の上へと飛び散った。
「ふ、ぅ゛……ッ!」
「おー、出てんな。の割には薄いけど。……なんだぁ? ちゃんとあいつらに管理してもらえてたのか?」
「っ、は、ぁ゛……ッ、ぅ゛……っ」
羞恥よりも疲労感の方が強い。強制的に与えられる快感は暴力に等しい。
もうやめてくれ、と阿賀松を見上げたのも束の間。根本までずっぽりとねじ込まれる指が更に奥まで進もうとしてくるのが分かって血の気が引いた。
「っ、ぁ、や゛……ッ、せ、んぱ……――っ!」
「逃げんなっつってんだろ、……おい」
「……ッ、ふ……ぅ゛……ッ!」
呼吸だ、呼吸しろ。こんなの、耐えられる。大丈夫だ。
ずぶぶ、と肉襞を掻き分け更に奥まで入ってくる阿賀松の指。いや、とっくに指は入ってる。
じゃあなんだ。まさか、これは。
「っ、ぎ、ひ……ッ!」
「涙ぐましい努力だよなぁ。……それ、声我慢してるつもりか?」
大きく晒された股の間、筋張った阿賀松の拳が入ってこようとしているのが見えて全身が凍りついた。指なんてまだ可愛い、どれだけ拳を固めようとも意味もなさない。それどころかより関節部分の凹凸が強調され、すでに限界まで伸び切った括約筋を更にこじ開けて親指まで入ってくるのだ。
それだけでも耐え難いほどの刺激を伴うというのに、この男は。
「ん゛、う゛……っ!!」
「んな健気な真似されたら堪んねえな。……意地でも鳴かせたくなる」
「っ、ぁ゛……――ッ!」
恐怖に緊張した体を押さえつけたまま、阿賀松は大きく指を曲げて更に前立腺を愛撫した。
「っ、ぅひ、ぃ……ッ!」
「相変わらず浅え体だよな。……あっという間にパンパンになりやがる」
「っ、ま、な、に……っ、ぬい、抜いてくださ、ぁ゛」
「馬鹿が、抜くわけねえだろ」
「あ、ぁ゛あ゛ッ!」
「っ、齋藤……っ!」
志摩が見ている。志摩に『大丈夫だから』と言いたいのに、口を開いたままそのまま一気にねじ込まれる拳にその先は声にならなかった。
文字通り腹の中をぶん殴られてるようなそんな重い衝撃は直に脳味噌をかき回されているようだった。ベッドの上、拘束されたまま俺は阿賀松に腹の中をかき回される。
「は、ぅ゛ぐ、……っ、ひ、ぃ゛……ッ!」
「……っ、は、なんだ、流石のユウキ君でも腕は俺のきついか?」
「……ッふ、ぅ゛――」
臓器ごと押し潰される。ず、と更に奥まで沈んでくるその腕に頭の中は真っ白になった。恐怖と強烈な刺激、生理的な快感が混ざり合い頭がおかしくなりそうだった。
どこまで入っているのか確認するのも怖かった。少なくとも、長く筋肉質な阿賀松の腕を肘まで挿れられたらと思うとただひたすら血の気が引いた。
瞬間、さらにずんと沈む阿賀松の拳に内臓を押し上げられた瞬間だった。腹の奥、溜まっていたものが胃液とともにせり上がる。
「っ抜、ぅ゛、ひ、ぐぷ、っぉ゛え゛ッ」
伸ばした舌。喉奥からごぼ、と溢れる嘔吐物をせき止めることなどできなかった。
吐き気とともについ先程芳川会長に食べさせられた内容物が溢れ、俺の顔を汚す。それを見下ろしたまま阿賀松は深いそうに眉根を寄せる。
「齋藤っ?! 齋藤っ!」
「……きったねえな、誰がベッド汚していいって言ったかよ」
「っ、ぅ、んぶッ」
口に残ったものを綺麗に吐き出すことすら出来ず、そのまま咳き込む俺に阿賀松は不愉快そうに目を細めた。
それも一瞬、腹の中の拳を引き抜かれたかと思えば、更に力を込めて腹の中を突き上げられるのだ。内壁を削り取るかのような乱暴な愛撫に耐えられず、下腹部が別の生き物のように激しく痙攣した。そしてそこ拳により圧し潰された胃から、形の残った吐瀉物が逆流する。
同時に、胃液の味に耐えきれずに噎せたせいで昇ってきていた吐瀉物たちが別の器官に入り込み、あまりの痛みに顔面が引きつった。
「っが、は……ッ」
「やめろ、もういいだろ……っ! やめろってば!」
――遠くから志摩の声が聞こえてくる。
志摩が見ている、なんてことを考える余裕はなかった。
痛みで塗り潰された思考は麻痺し始め、次第に意識は霞がかっていく。
それもすぐに腹の中の拳により無理やり現実へと引き戻されるのだ。腸壁を削り取られるような強烈な衝撃に耐えきれず、全身の筋肉はびくんと大きく跳ね上がる。
「っ、ぐ、っぅ……ッ!!」
「おいおい、これくらいで寝んなよ。……てめえから言い出したんだろうが、なっ?」
「ひっ、ぎゅ……ッ」
肉が潰れるような音がする。阿賀松の手首まで飲み込んだ状態で、腹の裏側を殴られた瞬間開いた口からは声にならない悲鳴が漏れた。
気持ちよくもないのに強制的に勃起させられた性器の先端からは先走りが溢れ、垂れる。
いっそのこと、ここで意識を飛ばすことが出来ればどれだけよかっただろうが。
媚薬により強制的に感覚器官から伝わってくるあらゆるものを快感に変換された状態では、何をされても地獄だった。押し上げられ、中に溜まったものを全て放り出したあとの胃からは最早なにも出ない。何度もえずき、咽ることしかできず、ただ阿賀松に内臓を搔き回される。
壊れたように亀頭から先走りを垂れ流したまま、俺はひたすら許容量越えた阿賀松の腕を受け入れることしかできなかった。
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