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そのさん

   差し出された一枚の紙に、輝雅は眉間にシワを寄せた。 「…………なに」 「見ての通り、リコール案。過半数の生徒と教員の署名、各委員会の委員長のサイン、必要なものは全部揃えた。あとは生徒会執行部の会長である、宮のサインだけ」 「それにおれは含まれているのか?」 「これにお前が含まれると思っているのか?」 「――――」  押し黙る輝雅を見つめる梨央の瞳に温かみはなく、梨央は今、風紀委員会委員長としてここに立っている。  わかってはいた。ズルズルと後回しにしていた。  輝雅は震える手でその紙を受け取った。 「宮、現状を見てもリコール案を受け入れないのであれば、俺たちはそこに宮もいれるよ」  会長の監督不行届だと言えば、多少の批判はあれど、リコールに持ち込むことなど容易だ。  この学園において生徒会執行部の会長という立場がどれだけの重責があるか、わからない宮ではない。役員の後始末も生徒会執行部、ひいては全校生徒の代表である輝雅の仕事だ。  ぐ、と奥歯を噛み締めた輝雅はサインをしようとペンを手に取り―― 「おやおやおやおや。これはこれは風紀委員会委員長、栢木梨央さんじゃないですかー。こんなとこでなにをしておいでで?」 「……」 「諒」  唐突に梨央の横に現れた男は輝雅の取り巻きという名の従兄弟、宮門諒だ。かの「りょーくん」である。 「ああ、リコール案ですか。ようやく動いたんですねぇ。ちなみに僕も署名しましたよ」 「聞いてねえよ」 「輝雅さんは聞きたいかと思いまして」 「聞いて損はなかった」 「そうでしょう」  にこっと笑った諒はふたりから離れて書記の席に着き仕事をし始めた。しかしすぐに輝雅を見た。 「輝雅さんはまだ待つおつもりで?」 「……呆れるか?」 「それが貴方の美徳ですもの。ですが、僕らは貴方がこうなっていることを不愉快に思っております。ご両親達も心配しておいでです」 「…………わかってる」  輝雅は躊躇いを消し、サインをいれる。  生徒会執行部会長、宮輝雅。  ――その名の重みをまたひとつ。    

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