3 / 12

第3話

 そんな中、人々が笑顔になる時がある。 「また、鬼を討ち滅ぼしてくれよ。桃太郎」 「もっと奴らから搾り取っておくれよ」  財を求めるその時。  人は、守るもの。これは人への恩返し。その想いで、あの者達と対峙した。そこに一滴の血も流れなかったかと言えば、嘘になる。桃太郎は、鬼の棟梁を守るためその身を投げ捨てた者を容赦なく切り捨てた。これも人を守るためと思ったからだ。そう思わなければ、罪悪感で押しつぶされていたことだろう。いくら人のためとは言え、己の手を血で染め上げることに、何の感情も湧かないなどということがあるだろうか。  己は覚悟を持って鬼を討伐した。人が幸せになるのなら己の手が穢れることも厭わない。そんな気持ちでいた。  だが、今のこの状況は何だ。  かつて人と鬼の間に何があったかは知らない。鬼ヶ島より持ち帰った財は、元は人の物なのかもしれない。しかし、桃太郎の知る鬼は、何も奪わなかった。彼らは鬼ヶ島の平穏を守るため、財を差し出した。  対して人はどうだ。今も財を奪い合い、争いが起ころうとしている。  これではまるで、どちらが。  桃太郎は心に硬く持っていた己の軸が揺らいでいることを感じていた。  気がつけば桃太郎は、鬼ヶ島を訪れていた。  以前は陰の気に包まれた邪悪な土地だと感じたが、今の桃太郎は、それを感じとる事はなかった。  桃太郎の出現に鬼達は警戒したが、手を出してくるものはいなかった。それもその筈。返り討ちに合うのは目に見えているからだ。  動向を見つめる者、怯えて建物の中に逃げ込む者。桃太郎は彼らには目もくれず、ある場所を目指した。  鬼の棟梁と一騎討ちをした場所。

ともだちにシェアしよう!