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第5話

「宝を持ち帰って倭人はどうした。争いが生まれたのではないか」 「黙れ」 「お主はただ善意でこの儂と戦い、ただ人の為に宝を持ち帰った。それが人の為になると信じてな」 「やめろ」 「蓋を開けてみたら暮らしは豊かになったが、人は貪欲にもなった。言われたんじゃろう。もっと宝を奪ってこいとな」 「黙れと言っている!」 桃太郎は耐えきれず、愛刀を引き抜いた。 同郷の名匠が桃太郎のために鍛えた名刀である。 「お主、何に怒りを感じておる?」 「怒り?怒りなら感じているさ。あの時、お前の口を封じておかなかった、己自身にな!」  桃太郎は勢いに任せ、鬼に飛びかかる。俊敏さでは、桃太郎に部があるのだ。それは、先の戦いで証明されている。  蝶のように舞い、蜂のように刺す。桃太郎の得意とする戦法で、鬼の獲物を弾き落とした。  今回も同じようにしてくれる。その後で喉をついて、耳障りな言葉を二度と吐けないようにしてやる。  そのつもりであった。 「そこまでじゃ」 「!」  何が起こったのか。  刀は叩き落とされ、桃太郎は鬼の棟梁に片腕を捕まれていた。  先の戦いでは、こうまで一方的な展開にはならなかった。鬼の棟梁が劇的に腕を上げたのか。  違う。己が無様をさらしただけだ。  状況は理解したが、体が動かない。鬼の棟梁がもう一方の腕で桃太郎の背を押さえつけているからだ。

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