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06※
こっちの方からいい匂いがする、というテミッドの後を付いていくとすぐに目的の施設を見つけることができた。
食堂、というよりも規模は小さいがそれでもそれなりの人数が集まって談話できるほどの食事スペースがそこにはあった。
「誰もいない……けど、丁度いいか。何食おっかな」
「……」
「テミッド?」
「ぁ、っは、はい……っ!」
慌ててテミッドが頷いたとき、テミッドの腹の虫も反応するようにきゅるるとまた鳴いた。よほどお腹が減ってるのかもしれない。その目はなんとなく焦点が定まっていない、忙しなく眼球は動き、そして俺を見ようとしなかった。
テミッドの挙動が度々怪しくなるのは珍しいことでもない。それよりも早くテミッドの腹の虫を落ち着かせるかと俺達は奥にあるソファーに腰を下ろすことにした。
人気はないが姿なきハウスメイドは元気に働いているようだ。席に着くなり、喉を潤したかった俺の元に壁からはフルーツジュースの入ったグラスがにゅっと生えてくる。
そしてテミッドのテーブルの上には。
「っ、お゛……ッ!」
で、出た……あのグロテスクな臓器盛りパフェだ。
血の匂いと見た目のえぐさに思わず吐き気がしたが、堪えた。目をキラキラさせたテミッドはそれにかぶりついてべちゃくちゃと食べ始めるのだ。
これは種族の違い。相手を尊重する。人それぞれ。それらしい言葉で自分を説き伏せ、俺は不快感をかき消すためにジュースを飲み干した。
大きな一口を食べたテミッドだったが、先程までの目の輝きがす……っと消えるのだ。
一口、二口食べるごとに明らかに表情が曇っていく。
「……? どうかしたのか?」
「……おいしく、ないです……」
「へ?」
「……っ、う……これ、僕の苦手な味……」
臓器に苦手も何もあるのか。なんて思ったらす、とテミッドは一口クリームらしき部分をスプーンで掬ってそれを差し出してくるのだ。ま、まさかまた食べろというのか。
以前盛大に吐いたことを思い出し、断ろうと思ったが……近付いてきたスプーンに乗ったそれから香ってくる匂いにピクリと鼻が反応する。
「ん……? んん? なんか、甘い匂いがするな……美味そうな……」
ちょっと興味が湧き、先っぽのクリームだけを舌先で舐めれば「あ」となる。……これ、臓器に見せかけたいちごのゼリーだ。
そのままぱくりとスプーンに乗ったものを一口食べれば、あまりの美味しさに頬が蕩けそうになる。
「お、おいしい……っ!」
「ほんとですか……?」
「あ……でも俺が美味しいって思ってことは、テミッド苦手なのかもな……」
言われてみれば、確か生き物は出てこないと言っていた。そもそも生物の一部である血や臓器もそれは適応されてるということなのだろうか。でも肉料理は出るらしいしな……どういう仕組みだ?
そんなことを考えてると、テミッドはふるふると首を横に振るのだ。
「ぼ……ぼく、伊波様が悦んでくれるなら……十分です……」
「でも、これじゃテミッドがお腹減るだろ?」
「他のも、チャレンジしてみます……」
「ああそうだな、もしかしてあの店のパフェが再現不可能だっただけかもしれないし」
小さく頷き返したテミッドは目をぎゅっと瞑り、食べたいものを思い描いてるようだ。瞬間だった。今度は天井から巨大生肉が落ちてきた。
「おわっ!!」
「で、出ました……」
「す、すごいデカさだな……」
いつの間にかに置かれていた皿の上、どんと転がるそれはなんの肉だろうか。
獣の肉か……?全長子供くらいの大きさあるぞ。
というかこれが入るのか。
獣特有の生臭さに思わず噎せそうになる。やはり先程のは味まで再現不可能だったというだけでこういう肉はありなのらしい。
そして続けて天井から複数の手が生えてきて、肉に向かって真っ赤なソースが降り注がれる。
瞬間、辺りには血の臭いが一気に広がるのだ。
「って、うわ、こっちまでかかってきた……!」
「い、伊波様……っ!大丈夫、ですか……?!」
あまりの勢いの良さに飛び散るソースが顔に掛かる。って、よく見たら服にもかかってるし。
つーかこれ、血だよな。
って思いかけた矢先、背後の壁からいきなり複数の手が生えてきた。
壁の模様と同化したその手の先にはナプキンが握られてる。どうやら飛び散った粗相を綺麗にしようとしてくれているようだが……。
「ぉ、っおおっ?!」
「い、伊波様……?!」
「っ、わは、ちょっと待っ……くすぐった……っ、」
無数の手は服のソースを拭おうとしてるのか、腰を撫でるように服の裾を持ち上げられ、そのままゆっくりと脱がそうとしてくるのだ。
「っ、ま、待った、そこまでしなくてい……ッ、い、……っ、ん、ふふっ……!」
「……っ、伊波様……っ!」
慌てて駆け寄ってきたテミッドが俺の腰にまとわりついて来る手を引き剥がそうとする、が、あまりにも硬いらしい。
というか、あの馬鹿力のテミッドですら敵わない力ってなんなのだ。
「っ、ちょ、やめろ……っくすぐったいから……っ!」
一本の手に服を捲られ、もう一本の布を持った手に素肌を拭われる。
無機物なのかすらもわからない、それでも『他人に触られている』という感覚はあまりにもこそばゆく、思わず声が上擦ってしまう。
腹部を拭っていた手を引き剥がそうとテミッドだったが、その手は無視して更に上へと這いずるのだ。
「っ、待……っだ、だめだって、そこもう汚れてな……ッ、ぁ……ッ?!」
平らな胸をその大きな手のひらの化け物に撫でられた瞬間思わず声が漏れてしまう。まさか、と思ったときには遅かった。
咄嗟に逃げようとするが、両腕を拘束されたまま頭上で捕まえられればどう足掻いても無防備になってしまうのだ。がら空きになった胸を這う手がもう一本伸びてくる。腕を撫でるようにシャツの脇の中からも手が滑り込んできて、複数の手のひらに胸をイジられれば流石に異変に気づいた。
突起を、乳輪を、胸筋を、意志を持ったように弄るその指は他のハウスメイドたちとは明らかに違う。
乳首ばかりを捏ねられ、思わず膝の頭をこすり合わせる。腰が揺れそうになるのを奥歯を噛み締めて必死に堪えた。そんな俺がよほど苦痛に見えたのだろう、テミッドの顔は更に蒼白になっていく。
「い、なみ様……っ? だ、大丈夫、ですか……っ?すぐに、助けますので……っ」
「だ、大丈夫……っんぅ、だ……ッ」
「でも……っ」
「ニグレド……ッ」
「……っ、ぇ……」
「ニグレドを助けに呼んできてくれ」そう、声の震えを抑えてテミッドに頼む。テミッドは自分ではどうにもできないと察したようだ、一瞬その目が大きく揺れたが、すぐに「はい」と頷いた。
「すぐに、戻ります……ッ」
俺から離れたテミッドは、そう慌ててラウンジを飛び出した。
……テミッドは無垢で純粋だ。そんなテミッドに自分の痴態を見せるような真似だけはしたくなかった。
テミッドがいなくなったことに気付いているのかわからないが、服の下を這いずり回っていた指は先程よりも大胆に人の胸を捏ね繰り回すのだ。
「っ、ふ……ッ、ぅ……ッ」
腕を擦り合わせて必死に拘束を逃れようとするが、がっちりと束ねられたまま動かない。
既に尖った乳首の根本を摘み上げられながら側面を擽るように扱かれる。そして別の指に先端を揉むように潰され、どうにかなりそうだった。
やり場のない感覚に腰が震え、思わず机を蹴り飛ばそうとすれば伸びてきた手に足首を捉えられるのだ。
「っ、や、めろっ! 馬鹿……っ、ぁ……!」
片足を持ち上げられれば、それだけで自由が更に失われてしまう。片方の胸を揉みしだかれ、先っぽを執拗に転がされれば下腹部が酷く苦しくなるのだ。
くそ、変態魔物が、と罵倒してやりたかったが、いきなり背後から伸びてきた手に頬を撫でられ、全身が泡立った。白い掌が頬から唇へと触れ、そのまま口の中に指が侵入してくる。人間の手に近い形だが、噛んでやろうと歯を立ててもびくともしない。それどころか同時に先程の倍の手がにょきっと生えてきた瞬間血の気が引いた。
テミッド、早くニグレドを連れてきてくれ。
何故、何故こんな目に遭わなければならないのか。
ここは安全なはずではなかったのか。
「ふ、ぅ……ッ」
口の中、伸びてきた白くキグルミのような肉厚な指に咥内を掻き混ぜられる。食べたばかりにも関わらず、喉の奥を指でぐにぐにと刺激されればそれだけで器官が大きく収縮し、吐き気を覚えた。
えずきたいが、口の中の指そのものが邪魔をする。
呻く俺を無視して、無数のハンドはそれぞれ意思を盛ったように体を弄るのだ。
一本は右胸、もう一本は左胸の乳首。足、腿、それから開かれた下半身。スラックス越しに大きな手のひらに股間を揉まれ、血の気が引いた。
「っ、う、ぅーーっ!!」
やめろ、変なところ触るな!と、渾身の力でバタつこうとするがただ体力が浪費されるだけだ。ハンドは焦らしてるつもりなのか、最初は優しく撫でるように股間の膨らみに触れた。
それから掌全体でやわらかく包み込むように布越しに性器を揉まれ、胸の奥からちりちりとした熱が込み上げてくる。
「っ、ん、ぅ……っ」
筋肉の凹凸すらない平らな胸を揉まれ、あわや片方の手は人の乳首を玩具かなにかのように引っ張ったり埋め込んだりと好き勝手される。
なんてことはない。ただ触れられてるだけだ。なるべく反応しないように堪え、そうひたすら自分に言い聞かせる。
そう目を瞑って精神統一でもしようとしていたときだ、一本の手が爪先へと伸びた。そして靴を脱がされ、そのまま靴下を引っ張るように脱がされ、息を飲む。剥き出しになった足の裏に指が触れた瞬間、目が覚めるような感覚が脳天に落ちた。
「っ、ふ、く」
あまりのこそばゆさに思わず足を動かし、手から逃げようとする。が、すぐに捕まった。そのまま足の裏、土踏まずの辺りをつうっと縦一文字になぞられた瞬間びくんと全身が大きく跳ねる。
駄目なのだ。そこだけは。
「っ、や、へ……っ、ふ、ぅ……ッ!」
やめろ、やめてくれ。そう渾身の力で足を動かす。脊髄反射に等しい。あまりのこそばゆさに咥内の指に噛みつき、声をあげようとすれば涎が溢れた。
そんな俺の反応を読んだように更に複数の手が現れ、片方の足の靴も脱がされる。血の気が引いた。
まさか。
「っ、や……やめ、んっ、ふ、ぅ……! っう、ぁ、はは、……っやへ……っ、ぅ、はははっ!」
予感的中。思いっきり足の裏を擽られ、全身を巡る血液が一気に沸騰する。
痛めつけられているわけではない、ハンドたちからの敵意は感じない。それなのに、息ができなくなるほど弱いところを執拗に擽られる。逃げたいのに逃げることができず、その感覚を逃すことも出来ない。喉がひりつくほど悲鳴にも似た笑い声が溢れた。腹がびくびくと痙攣し、あまりにも強い刺激に全身が熱くなった。
最中も他の手は勝手に全身を愛撫するのだ。体温のない手に全身を撫でられ、より過敏になっていく感覚に恐怖が膨れ上がる。
こんなの、拷問だ。いや拷問の方がまだ耐えられた。
「っ、ふ、ぅ゛ッ、ぅ、うう~~ッ!!」
びんと伸ばした爪先が震え、内股が痙攣する。腰がガクガクと震え、股間を撫でていたハンドの動きに合わせて下着の下から濡れた音が混ざるのが分かった。涎を拭うこともできない。ひいひいと悶絶するが、休む暇は与えられない。更に先程よりも増えた手に脇腹を擽られ、頭の中が電気ショックを浴びたように真っ白になった。
「っ、ふ、ぅ゛……っ、」
無理だ、これ以上は死ぬ。本当に。笑い死ぬなんて嫌だ。
首を横に振り、必死に伝わるかもわからないハンド相手に嘆願する。が、やはり無機質なハンドに情はないらしい。
留まるどころか更に激しさを増す擽りに声にならない悲鳴が漏れた。絶頂にも似た感覚が継続的に脳に走る。息をする暇もなく、あまりの息苦しさに喘ぐ口からは自分のものとは思えない声が漏れた。
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