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そして数分後。
どこから取り出したのか縄を取り出した能義は五条を椅子に縛り付け部屋の隅に放置する。
「ぁん……縄でちんこ擦れて気持ちいい……ああっ尾張のえっちな視線が俺の体を舐めるように隅から隅まで……ああっ! 勃起ちんぽ気持ち良いいん!」
「能義、そいつの口も塞いどいて」
「了解しました」
そしてまた数分後。
ガムテープで口を塞ぎ強制的に五条を黙らせた俺たちは適当な椅子に腰を下ろし臨時プチ会議を始める。
「おい岩片、まじでこいつと仲良くすんのかよ」
部屋の隅でもごもご言いながら椅子をガッタガッタ揺らす五条を一瞥し、俺はそう確認するように岩片に尋ねる。
先ほどのことで、五条と岩片の相性が悪いことはよくわかった。というかあの楽天的な岩片がキレるというのもよっぽどだ。
いつも殴られても殴り返さないから喧嘩苦手なのかと思っていたがもしかしたら思っているよりも弱くないのかもしれない。
そう思ったが、ただ単に五条がひ弱なだけという可能性の方が大きいだろう。とにかく先ほどのインパクトが強過ぎて、今はそこまではないがやはりちょっと戸惑う。
「岩片君、友達は選んだ方がいいと思いますよ」
そう尋ねる俺に対し、岡部はそう同調してくる。お前もな。
そんな俺たちの言葉に、岩片は深く息を吐くように「まあな」と口を開いた。
「確かに俺に対しての礼儀を弁えてないやつだけど情報収集が得意なやつが身近にいた方がいいだろ」
「だからってあいつに拘らなくてもいいだろ、ほら、五十嵐も結構集めてたじゃねえか」
「五十嵐の情報源がこいつなんだよ」
『こいつ』と言うところで岩片はまだガッタガッタやっている五条に目を向ける。
「まじで?」それは初めて聞いた。というか五条と五十嵐ってすごい相性悪そうなんだが。
「おや、よくご存知で。部長は盗聴盗撮の常習犯ですからね、それらを商売道具として使っているんですよ」
そんな俺たちの会話に聞き耳を立てていた能義はそう笑いながら口を挟んでくる。盗撮はわかったが、盗聴もか。犯罪すれすれじゃねーかと呆れたが、どうやら能義もそれは同じのようだ。
「私たちも彼の悪癖に困ってるんですが、利用者が多い分潰すにも潰せず。なるべく他の連中に使わせないようしていたのです」
ふうと小さく溜め息を吐いた能義だったが、すぐに笑みを浮かべる。
「しかし、今回のようなデマが他にもあるとしたらわざわざ潰さなくても勝手に自滅しそうですね」なんだか思ったよりも大変そうだ。
そう笑顔で続ける能義に、俺は驚いたように目を丸くして五条を見る。
「情報収集って金になるんだな」
「ハジメには無理だろ。お前ピュアだからなんでも信じるし」
ぼやく俺に対し、岩片はそう相変わらずの調子で続ける。ピュアってなんだよ。喜べばいいのかこれは。
「まあ、取り敢えずやっぱここはあれだな」
そして、すっかり調子を取り戻した岩片はそう口を開く。わざとらしく焦らすような言葉を口にする岩片に、お望み通り俺は「あれ?」と尋ねてやることにした。
すると、岩片はよくぞ聞いてくれましたとでも言うかのように得意気な笑みを浮かべる。
「調教師の腕次第ってことだよ」
そうにやりと唇の両端を持ち上げ嫌な笑みを浮かべた岩片はそう続けた。
「……調教師?」普段普通に過ごしていたら聞かないであろうその単語に俺は眉を潜める。
ただわかることは一つ。絶対ろくなことじゃない。
――写真部部室前。
「岩片さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫、ハジメが持ってくれるって言ってるし」
「全然大丈夫じゃないから手伝ってくれ」
岩片に言われ、手足拘束した五条を背中に抱え部室を出た俺だったが普通に重い。
すりすりと人の腰に下半身押し付けてくる五条を落とせば、能義は「仕方ないですね」と笑いながら五条の足首を掴んだ。
「お、ありがとな能義」
「お礼は一フェラで構いませんよ」
「やっぱ俺一人でいいわ」
「なんなら一素股でもいいですよ」
なに性行為を単位みたいに使ってんだよ。しかもグレードアップしてんじゃねーか。いやどっちもどっちだけど。
敢えて聞かなかったことにすれば、やれやれと肩を竦める能義は「我儘な方ですね」と苦笑を浮かべ五条から手を引いた。まるで俺が間違っているような言い方はやめてほしい。
「尾張君、やっぱ一人はキツいですって。俺、足持ちますよ」
結局俺だけになりやだなぁと五条を見下ろしていると、見兼ねた岡部は言いながら五条の足首を掴んだ。
なんでどいつもこいつも上半身を抱えたがらないんだというか他に持ち方あるだろうと思いつつも手伝ってくれるだけ有り難い。
「悪いな、助かるよ岡部」
言いながら五条の上半身を両手で抱える。五条と目が合って、俺はそっと顔を反らした。
「もう面倒だから転がせよ」
そのまま移動しようとしたとき、何もせずこちらの作業を見守っていた岩片はそう面倒臭そうに続ける。相変わらずひっでーやつだな。
「あっ台車なら確か部室にありましたよ、俺取ってきますね」
流石にいくら五条が苦手だからって死体みたいな扱いしないぞ俺は。そう思った矢先、岩片の言葉に閃いたような顔をする岡部は言いながらぱっと五条から手を離す。
本格的に死体扱いである。というかこいつ岡部の先輩じゃないのか。
そそくさと部室に入る岡部を見送り、どうしようもなかったのでそのまま五条の上半身を抱えなんだかこいつ可哀想だななんて思いながら哀れみの眼差しを向けていると鼻息荒くした五条が胸元に顔を埋めて鼻先を擦り付けてきたので俺は無言で床に捨てた。そして、岡部の持ってきて荷台を押し五条を学生寮の自室まで運んだ。俺が。
五条と一緒に荷台に乗って遊ぶ岩片と能義のせいで中々時間がかかった岡部の応援のお陰でなんとか運び終えることができる。途中一般生徒と顔を合わせたりもしたが能義がいたからだろうか。見てみぬフリでなんとかやり過ごすことが出来た。
そして能義と岡部と別れ、岩片の命令で俺は渋々自室へと五条を上げる。そのことが間違いだった。
「ハジメ、こっちの部屋借りるぞ」
そう言って五条を引き摺る岩片が入っていったそこは元々ついていた物置部屋で、まだ手入れしてないはずだったが問答無用で五条を連れ込む岩片のあまりの気迫に止めることは出来なかった。
そして、その日から岩片による岩片のための五条調教が始まった。
それから数分も経たないうちに艶めかしい声どころか「ギャアアア」だとか「ヒイイッ」とかどこぞのスプラッター映画のような悲鳴が漏れてくる物置部屋に耐えれず、俺は岩片たちを残したまま自室を後にする。
なにやってるんだあいつらは。気になって仕方がなかったが恐ろしくて覗く気にもなれない。
五条は岩片に任せておこう。と言うことで、俺は残りの授業を受けるために再び校舎へ戻ることにした。
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